【ルームクリップ 岩永常勤監査役インタビュー】
監査役の始め方 ~キャリアのスタートは無理なく、自分の興味も大切に~

ルームクリップ株式会社
常勤監査役 岩永 法子

昨年6月に、住まいと暮らしに特化したSNS「RoomClip(ルームクリップ)」やインテリアブランド「KANADEMONO(カナデモノ)」などを運営するルームクリップ株式会社の常勤監査役に就任された岩永さん。
3人のお子さんの子育て中でもある岩永さんは、監査役になったことで、会社の成長も自分のことのように嬉しく感じるようになったと語ります。
そんな岩永さんが監査役の世界に飛び込んだきっかけや、会社選びの視点、周囲の専門家との協力など、監査役としてのキャリアをスタートさせる上でのエッセンスをお話しくださいました。

最終更新日 2023.8.14
※役職はインタビュー実施日現在のものです。

公認会計士を選んだ理由と監査法人での業務

岩永さんは公認会計士でいらっしゃいますが、いつ頃から資格取得を目指されたのですか。

私は海外の高校を卒業後、日本の大学に進学しているのですが、卒業から入学まで10か月ほどの遊休期間がありました。
初めは遊んでいたのですが、すぐに飽きて「このままでいいのだろうか」と思うようになりました。
父親が昔から「女性は資格を持っていると、出産などで働けない時期があったとしてもキャリアを止めずに仕事を続けられる」と言っていたこともあり、資格の勉強をしようと考えたんです。

公認会計士という資格があることは知っていましたが、本当に自分がそれを目指せるかということには不安があったので、まずは簿記の勉強からスタートしました。
簿記が得意だったらその先の資格も目指せばいいし、自分に合わなかったら止めたらいいというくらいの気持ちで取り組んだところ、数字がパズルみたいにはまっていく感覚が楽しくて、3級、2級、1級と合格できたんです。
それで、大学2年から公認会計士の資格取得を目指してダブルスクールをするようになり、大学卒業後に合格し、有限責任監査法人トーマツに入社しました。

監査法人ではどのような業務を担当されていたのですか。

トータルサービス部というところで、上場前後の中小規模の会社の金商法監査、会社法監査、内部統制監査などの業務を担当していました。
英語を話せることから、海外展開しているような大企業を担当することも勧められたのですが、そのような会社を担当すると、分業制で一つの領域を深く見ることになりがちです。
それよりは中小規模の会社を担当することで、広く浅く、早く全体感を見られるようになりたいという思いで業務に臨んでいました。

親としての当たり前が叶った監査役への転職

昨年6月にルームクリップの常勤監査役に就任されていますが、どのようなきっかけで監査役の道を選ばれたのでしょうか。

トーマツでの監査の仕事は非常に楽しかったですし、周りの人にも恵まれており、非常に良い環境でしたので、まさか自分が辞めるとは考えていませんでした。
私には3人の子どもがいるのですが、産休・育休から復帰後もしばらくは子育てとの両立のために時短勤務をしており、その後マネージャーを目指すためにフルタイムに戻して「さあ、ここから頑張ろう」という時に、ちょうど新型コロナウィルスが流行してしまったんです。

クライアントに往査していた監査業務はリモートに変わり、慣れない業務の中で、小学校・こども園に通っていた子どもたちも休校・休園で常に自宅にいる状況が続きました。
それでも仕事の期日は変わらずやってくるので、これまで通りに対応するためにがむしゃらに仕事をこなし、夜も週末もないような働き方をしていました。

そんな中、一番下の子どもの卒園式があり、思い出のビデオ映像が流されたのですが、初めて観るシーンばかりで、私はこの子のこども園時代の思い出を一切知らないのだと思い、涙が止まらなくなってしまったんです。
その時に初めて、可愛い盛りの彼の4~5歳の時代をすべて見逃してしまっていたと気づき、何のために働いているのだろうと思いました。
加えて、受験を控えている上の子どもに対して何もできていなかったことも気がかりだったので、子どもたちとの時間をつくるために働き方を変えたいと思ったのが転職のきっかけです。

実際に監査役になられて、お子さんたちとの時間は増えましたか。

はい。やはり監査役は時間や場所の自由が利く仕事ですから、今は子どもの生活のリズムに合わせて、子どもたちが帰ってくる前に自分の仕事を終わらせるなど、上手く調整することができています。
子どもの行事ごとにも参加できるようになりましたし、これまで自分の中で優先度の低かった保護者会にも行けるようになりました。

保護者会に行く時、保護者証やスリッパを持って行くのが当たり前なのですが、以前はそのようなことを考える余裕がなく、それすら用意できていなかったんです。
今は保護者証もスリッパも用意できているので、保護者として当たり前の行動ができていることが嬉しいです。

転職活動はどのようにされたのでしょうか。

複数のエージェントに登録して、それぞれにいくつかの会社を紹介していただきました。
監査役は少々特殊な職業で、基本的には一人で独立した立場を取らなければならず、任期も4年間と長いので、自分に合う会社でなければ苦しいだろうと考えていました。
また、会社によって監査役に求める役割が非常に異なるので、そこに対しても自分の特性や希望の合う・合わないがあります。
私はそれを見極めるために、興味のあるいくつかの会社に対して、会社ごとにカスタマイズせずに全く同じ職務経歴書を提出し、質問されたことにも全く同じように答えて反応を見るようにしました。
その結果、一次面接ですぐに不合格になった会社と、最終まで進んで内定をいただいた会社の、真っ二つに分かれました。

どのようなところに魅力を感じてルームクリップを選ばれたのですか。

一つは、経営陣やコーポレート本部の方々がとても誠実だったことです。
私は面接の際に、「不正やリスクが見つかった時には指摘するスタンスである」ということをどの会社にもお伝えしていたのですが、それに対して会社を良くしていくためには必要なことだと理解を示してくれました。

最後の決め手になったのは、主婦が主役になれるサービスを提供していることです。
私は産休・育休に加えて、夫の海外赴任への帯同で中国に住んでいた時期もあり、計6年間キャリアを止めて専業主婦をしていた期間がありました。
通常、6年間の休職はキャリアの断絶としてマイナスに捉えられることが多いのですが、ルームクリップだけはそれを専業主婦の経験があるという価値として、プラスに捉えてくれたんです。

職業人としてだけではない、岩永さんのパーソナルな部分も価値として捉えてもらえたのですね。

はい。私にとって専業主婦だった6年間は大事な期間だったので、そこをプラスに捉えていただいたことを嬉しく思い、ルームクリップへの就任を決めました。
実際に中国から帰ってくる時にもルームクリップを利用して家具を見たりもしたので、自分にとって親しみのあるサービスを提供している会社というところも魅力でした。

自分の目で見て納得したい。慎重な姿勢で臨む初めての監査役

業務上、社内の方との対話・ヒアリングも多いと思いますが、社内ではどのようにコミュニケーションを取られていますか?

最初は、社内の方々の顔と名前も、誰がどんな仕事をしているかも分かりませんでしたので、いろいろな部署の会議に入れていただきたいとお願いして、同席させていただきました。
コミュニケーションという意味では、オフィスでスイーツやお弁当が出る日など会社主催でコミュニケーションを促進する機会があったので、私も積極的に参加しています。
そうして話す中で皆さんに顔を覚えてもらい、何かあった時に相談していただけるようになると嬉しいです。

監査役から聞きに行くばかりではなく、相談して欲しいという気持ちもあるのですね。

私からお話を聞きに行くにしても、「この人には話しても大丈夫」と感じていれば本音を話してもらえると思うんです。
監査役の一番の仕事は取締役の職務執行状況を監督・監査することですが、ルームクリップの会社規模(※)であれば社員との対話も叶います。
社員の皆さんから得られる情報というのはとても貴重なので、可能な限りこういったコミュニケーションを大事にしていきたいと思っています。
現場の作業もできるだけ自分の目で見たいと考えており、半年ごとに名古屋の家具倉庫で棚卸を皆でする際にも同行して作業をチェックしています。

※インタビュー実施の2023年7月時点で約150人

初めて監査役を担当する会社として、規模的なやりやすさというのはありますか。

そうですね。もちろん、初めから大きな会社を担当することはできると思いますし、就任されている方も多くいらっしゃいます。
ですが、私としてはいくつも拠点のある大企業よりも会社の全体感を把握しやすいという点で、一つひとつを自分の目で見て納得しながら業務を進められており、最初の会社としてやりやすさはあります。
やはり責任が発生する職務なので、自分が気づいていたのに何もできなかったり、止められなかったりして事態が起きてしまったのであれば納得して責任も取るのですが、自分が分かっていないところで何かが起きて責任だけ取るということはないようにしたいと考えています。

会社の成長が自分の喜びに。監査役ならではのやりがい

監査役としてのやりがいや醍醐味はどんなところに感じていらっしゃいますか。

監査法人時代と今とで明確に違うのは、やはり「中の人」として、より自分ごとになるという点です。
会社の成長が自分のこととして嬉しいですし、そのように感じられること自体が醍醐味でもあります。
監査役は独立した立場でなければならないので、取締役と仲良くなりすぎて牽制が効かなくなってはいけないのですが、それでもこの会社を良くしていきたいという思いを同じくする仲間になれたことを嬉しく思っています。

仲間という感覚は、確かに監査役ならではかもしれませんね。

はい。これまでに何度か「岩永さんが監査役でよかった」と社長やコーポレートチームの方から言っていただいたことがあり、とても嬉しかったです。
監査法人の人としてではなく、“私”でよかったというのは、監査法人時代には聞いたことのない言葉でした。

また、私が社内での数少ない会計の専門家であるということも醍醐味の一つです。
社内にはUSCPA(米国公認会計士)もおりますが、監査法人のように何千人も会計士がいる状況とは異なるので、経験のない論点や苦手な論点に対してもきちんと回答できなくてはいけないという点で、プレッシャーを感じつつも一生懸命調べて答えを出すことにやりがいを感じています。
必要に応じて監査法人時代の同僚に相談することもありますが、そうやって自分の取り扱える論点を増やして成長していけることも嬉しいですね。

監査役は孤独じゃない。周囲を頼って協力することの重要性

今後どのようにお仕事をしていきたいといったお考えはありますか。

将来的には、非常勤監査役として他社の監査役も兼務してみたいと考えています。
ルームクリップに入ってみて、スタートアップ企業の経営会議では想像以上に事業それ自体の話題が多いことが分かりました。
私は事業におけるリスクの話や、会計上どういうことが問題になるかについてはアドバイスできますが、事業をどう成長させるかといったことに対して監査役の立場から意見することについてはまだ不十分です。
他社も含め、様々な事業の形態を学ぶ必要があると思っています。
また今後、規模の大きな会社も見ていけるように、すべてを自分が見なくても人に任せられるような勘所を身に付けて、幅を広げていきたいです。

今後、岩永さんのように常勤監査役を目指す女性にメッセージをお願いします。

最初は監査役が実際に何をするのか分からず、自分にできるのかという不安や怖さもありました。
ですが、やってみると監査役協会や女性会計士のつながりもあるので一人ではなく、相談できる相手もいます。
一人で何もかもできる完ぺきな状態でないと監査役になれないと思う必要はなく、これまでの知識と経験を活かし、周囲の専門家にも頼りながら協力していくことの方が大事だと思います。
当社にも非常勤監査役としてほかに二人のプロフェッショナルがいますが、その二人が非常に頼れる方々で色々と相談に乗ってもらっています。

ですから、もし挑戦してみたいと思いつつも務まるかどうかが不安で踏みとどまっている方がいるとしたら、まずは監査役としてのキャリアをスタートしてみるのがいいのではないでしょうか。
何より、仕事と家庭とのバランスもとりやすいので、私のように子育て中の方にはおすすめしたいですね。

       

CONTACT お問い合わせ

女性監査役をお探しの企業様、また監査役への就任にご興味がある求職者様はフォームに必要事項をご記入の上、お問い合わせください。

お問い合わせ後3営業日以内に担当者より連絡いたします。

当社担当者との面談の機会を頂き、求職者様には監査役の仕事内容や紹介企業の情報等の説明を、求人企業様には求職者のご紹介までの流れをご説明させていただきます。

会社名
氏名
フリガナ
メールアドレス
当サイトを知ったきっかけ
相談したいこと