【朝日新聞社 坂本常勤監査役インタビュー】
「新聞記者も監査役も”聞く”を活かせる仕事」

株式会社朝日新聞社
常勤監査役
坂本 弘子

 

新卒で朝日新聞社の記者となり、執行役員を経て現在は常勤監査役としてご活躍されている坂本弘子さん。
新聞記者としての経験の中で養われた聞く力、他人とは違う自分の価値を見出していく力は、坂本さんならではの魅力的な監査役像に直結しています。どのようにそのスタイルを確立されていったのか、お話を伺いました。

最終更新日 2022.01.15
※役職はインタビュー実施日現在のものです。

他人と同じにはなれないからこその挑戦とオリジナリティ

朝日新聞入社から現在までの経歴を簡単にご紹介いただけますでしょうか。

朝日新聞社には、大学卒業後、新卒で入社しました。
弊社の場合、記者職として入社すると、だいたい地方に勤務することになっていまして、行った先の警察や行政を担当し、弊社が主催している夏の高校野球の県チームと一緒に甲子園の宿に泊まって取材したりするんです。
私も入社した当初は岡山県に4年ほど勤務した後、東京に来て、途中で産休を取ったりもしながら40歳手前まで記者をしておりました。
その後、管理職に就くようにとの話があり、編集以外の部門にも異動しながらデスクや部長などのマネジメントを10数年間、担当してきました。そして2013年から執行役員、2018年から常勤監査役を務めています。

入社当初、女性の記者は今よりずいぶん少なかったと思うのですが、そういった面でご苦労はありましたか?

はい。当時、女性記者はその存在を喜ばれないといった風潮がありました。
岡山支局では宿直勤務のローテーションを10人程で回していたのですが、当時の労働基準法では女性は深夜労働ができなかったので、宿直の戦力にはなれなかったんです。
能力でもパーソナリティでもなくジェンダーだけで歓迎されず、「ガーン。期待されていないんだ、私。」と心が折れそうな状況ではありました。ですが、今となってはあまり期待されなかったことがむしろ良かった気もしています。

気負いなくやれたということでしょうか。

はい。どうせ評価されない、男性社員のように宿直できない、裸の付き合いもできないのであれば、違う生き方があるんじゃないかなと。苦労ではあったんですけど、人と同じことをやろうと思うから劣等感を感じるのであって、誰かと同じになる必要ってないですよね。自分ならではの会社に貢献できるやり方を考えればいいのではないかと思いました。
これは、新しい職務に就くときに前任者と同じである必要はないと考えられる点でも役立っています。
新聞社では事件原稿というものを書くのですが、だいたいパターンが決まっています。時に違うパターンで出してみても、やはり先輩に書き直されてしまうことが多かったのですが、ごくまれに独自のパターンの原稿が採用されることがあって、「今日の記事、君にしか書けなかったよね」とほめられたりすることもありました。若かった自分のささやかな挑戦が認められたことはすごく励みになって、今も覚えています。

そうやって、坂本さんならではの価値を積み上げてこられたのですね。

そうですね、自分なりの小さな価値ではありましたが、「他人と同じではないけれど役に立てることが何か」ということを常に考えてきたというのは糧になりました。
これは今の時代になっても男女関係なく必要なことだと思っています。それがないと、「なぜ自分がここでこの仕事をしているのか」を自分で肯定できないですからね。

チャンスの畑はたくさんある。ON/OFFの切り替えから得られるヒント

仕事と子育ての両立という面ではいかがでしたか。

出産後もフルタイムで、しかも不規則な勤務でしたので、ベビーシッターを週5日雇い、保育園に通わせていました。行政や会社の補助の制度はあるものの、気持ちの面では他人を家に入れることへの抵抗感も、育児を全て自分でできるわけではないことへのためらいもありました。ですが、仕事と育児の両方を頑張るには何を捨てるか、ということを考えた時に、その抵抗感やためらいを捨てることにしたんです。他人でも気持ちのいい人ならお願いしよう、子供は色んな人に愛されて育つのもよし、色んな人に助けてもらおう、と割り切りました。

両立していく中で、心がけていたことはありましたか。

心がけていたことは二つあります。
一つは、ONとOFFの切り替え。会社最寄りの地下鉄の駅の階段を下ったら「もう仕事は終わり!」と気持ちを整理しました。物理的に区切るようにしたんです。
もう一つは、優先順位を付けること。仕事も子育ても両方100%は無理なので、今日これだけはちゃんとやろう、優先順位の3まで出来たけど、4と5はなかったことにしよう、と自分でできたことを認めるようにしました。「今日ここまでできちゃった!」「偉いじゃない」と自分で認めるポイントを作って自分でクリアしていく。そうすると、自分が出来ている部分が分かって、自己肯定感が上がってくるんです。

子育てする・しないに関わらず心がけたいことですね。

そうですね。今も仕事のインスピレーションは、OFFの時間に湧いてくることが多いです。企画する仕事って、机に向かっていてもあまり思いつかないですよね。例えば、子供と遊園地に出かけても、そこの集客方法が何かのヒントになるなど、仕事に使えるアイディアはたくさんあります。時間がないからこそ、見えるものは全部使いたいという思いがあったのかもしれません。
チャンスの畑はそこらじゅうにたくさんあるんです。五感を使って耕しましょう。

常勤監査役は、自分なりの役目を見出せる仕事

現在の常勤監査役というお立場について、どのような思いで務めていらっしゃいますか。

執行役員の時とは事業における立ち位置が変わってくるので、最初はどういう風に向き合えばいいのか考えました。同僚の監査役には法務・労務などの専門知識に長けた方がいて、スタッフには財務に詳しい方もいます。そんな恵まれた環境ということもあり、私が同じ領域を今から勉強して目指す必要はないと思いました。
私なりに、何に力点を置いて監査役をやろうかと考えた時に、大事なことは「聞くこと」だと思ったんです。

坂本さんならではの監査役像ですね。

私は記者としても、マネージャーとしても、ずっと聞く仕事をやってきました。
例えば組織内のリスクなども、色々な人から話を聞いていく中にヒントがあるかもしれません。
また、子会社の財務状況を見て「最近売上がよくありませんね」と問うのではなく、その裏にある言いづらい事情や財務諸表には書かれていない悩みを愚痴として吐き出していただきたいと思っているんです。
表向きは監査に行くのだけど、私がCheer-Upして、もっとやる気になってもらうにはどうしたらいいかを意識して、話を聞いています。

事業へのかかわり方が変わったことによる心持ちや会社の見方の変化はありましたか。

そうですね。これまで同様に「聞く仕事」ではありますが、向いている方向が違います。
執行役員の時は外に向かって事業を進めていましたが、監査役は社内に向いている守りの仕事です。
内に向いている時間が多いので、外の世界の風やトレンドを感じるために、意識的にその時間を作るようになりました。休日や夜に社会人大学院の講義を受けたり、ボランティア活動に参加したりといったことです。

これから常勤監査役を目指す女性に、メッセージをお願いします。

近年、監査役に求められる役目は変わり、拡大してきました。
財務諸表を細かく見ることのできる虫の目は当然ながら大事ですが、世の中のトレンドや会社に求められていることをとらえる鳥の目も重要になってきています。
監査役は、執行とは異なる経営への責任があり、会社全体がつぶさに見える仕事ですから、最近は若い人材を一度監査役にして、その後執行役員にするといった会社も増えているように思います。経営を学ぶ一つのステップとしてもよいのではないでしょうか。
古い考えにとらわれずに、状況に合わせて自分がやるべきことを考え、自分なりの楽しさを取り入れていける仕事だと思います。

       

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