【マクアケ 篠木監査役インタビュー】
女性の公認会計士が歩むキャリアとは?別の選択肢を求めて選んだ監査役
株式会社マクアケ
常勤監査役/公認会計士
篠木 良枝
企業に勤める人たちがキャリアについて考えるタイミングは、どんな時でしょうか?
お給料を上げたくてキャリアアップを狙ったり、違う業界・業種に挑戦したくてキャリアを見つめ直したり……。人生の大半を費やす仕事だからこそ、模索しながら道を選択していくのでしょう。特に女性は出産や育児があるため、そのタイミングでキャリアについて考えるとよく耳にします。株式会社マクアケ(以下、「マクアケ」)常勤監査役の篠木さんも、こどもの存在がキャリアを見直すきっかけになったと話されていました。
篠木さんの最初のキャリアは地方自治体の公務員、そこから公認会計士の資格を取得し、監査法人での勤務は14年にも渡ったそう。
「私には独立開業したいという思いがないんです」と話されつつも、監査法人を経てベンチャー企業の常勤監査役というキャリアを選択した篠木さんは、公認会計士としてのキャリアをどう考えていらっしゃるのでしょうか。
最終更新日 2020.05.28
※役職はインタビュー実施日現在のものです。
※新型コロナウイルス対策のため、Web会議ツールを利用して2020年5月15日にインタビューを実施しました。
監査法人時代の繁忙期と育児の両立は体に堪えた
監査法人にお勤めの際にご結婚・出産を経験されたそうですね。育児との両立を考えて、キャリアを見つめられたのですか?
そうですね。監査法人での勤務は、人に恵まれてやりがいも感じていましたし、長く勤務するにつれてできることも増えていました。普段は子育てとの両立ができる仕事ではあるのですが、仕事が忙しい時期の育児には体が堪えていましたね。当時は大阪にいる両親が定期的に東京に来てサポートしてもらっていたのですが、それでも限界を感じていました。
監査法人は時短勤務や残業免除の制度も整っていましたが、繁忙期なのに仕事を途中で投げ出すわけにはいかないですし、自分だけでなくみんなが忙しいので、周りに頼るのも難しい状況だったんです。子育てをベビーシッターにお願いをする方法もありますが、家に他人を上げたくないという夫の希望があり使いませんでした。
お子様との時間も考えて、転職を考えられたんですね。
もともと細く長く仕事を続けたいという思いがあり、監査法人の制度は充実していたので、仕事自体を辞めることは選択肢になかったんです。
転職は考えていましたが、実は私が育休から復帰した直後が、リーマンショックの影響で多くのリストラがあった時代で……。勤務していた監査法人でも「早期退職プログラム」の話が来ていたほどでした。復帰して仕事が忙しくなってきたのと同時に、こどもの夜泣きで寝られないことも多く、さらには先のキャリアについても不透明で、メンタルがかなり落ち込んでいましたね。どんどんネガティブになっていて「私が退職してもいいですよ」と人事担当に言ってしまうこともありました。
そんな状況で改めて自分のキャリアについて「会社や誰かの指示を受けることなく、自分のやりたいようにやるためには、どうしたらいいんだろう」と考えるようになったんです。こどもと過ごす時間のためにも、自分の裁量で働ける環境を見つけたくて、転職を考えました。
「不安よりも楽しみだった」働いている人に魅力を感じたマクアケ
そこからマクアケに転職された決め手は何だったのでしょうか。
まずは公認会計士としての経験を活かせる仕事を探しました。その中で監査役という仕事を紹介していただき、最終的にはそこで働いている人たちに魅力を感じて決めたんです。
マクアケの経営陣は経営者としてのキャリアもすでにしっかり築かれている方々が多かったので、会社と関わりつつ良い刺激を受けながら仕事ができると思いました。
マクアケにジョインされてIPOをする前と後では、気持ちの変化や学びはありましたか?
当初は不安というよりも、チャレンジできることへの楽しみが大きかったです。就任時は管理部門もたった2人しかいない会社でしたが、チームとしてみんなでIPOを目指していけたことは、すごくいい経験でしたね。メンバーの人柄に恵まれたおかげで、何事も前向きに捉えられていましたし、IPO後は世間から注目されることも増えてきたため、より一層、責任感が強くなりました。
監査法人では会計監査を行なっていましたが、監査役は法務やビジネスリスクについても学ばなければなりません。監査という業務では共通しているので、イメージとのギャップも大きく感じなかったですね。日本監査役協会という監査役が集って情報共有する場所もあるので、月に一回程度顔を出して学びを深めたり、無知なことは情報収集をして学んできました。
監査役も子育ても「見守る姿勢」
監査役の仕事で心がけていることを教えてください。
監査役も子育てと似たように「見守る」という姿勢を忘れないことです。
子育てでは、こどもにも自分の人生があって、それに対してやりたいことはやらせてあげて、危ない方向にいかないようにだけ見守るスタンスを持っています。同じように監査役では会社が大きくなっていくのを見守りつつ、新たにリスクになる事柄を抑え、世間の見られ方を常に意識しながら会社が進むべき道に進むのを見守っている感じです。
昔はあまり強く問題視されていなかったハラスメントや長時間労働の問題といったように、リスクは常に変化していきます。そのため監査役の役割として日々の情報収集は積極的に行っていますね。
会計士は常にリスクを考えて行動する姿勢が身についているのですが、危機管理能力が優れていたり、細かく気付ける点を踏まえると監査役は女性に向いている仕事だと思います。
従業員との関わり方はどう工夫されていますか?
仕事だけでなくプライベートのことも含めてよく話をするようにして、いつでも相談してもらえるような工夫をしています。
そもそも会社が社員同士のコミュニケーションを活発に行うカルチャーなので、従業員との距離も近いのです。先日も新型コロナウイルスの自粛期間に、24時間番組を会社で作っていたのですが、そこで「徹子の部屋」をパロディ化した「篠木の部屋」という企画を行ったりしまして(笑)新卒の社員に公開インタビューをさせていただきました。普段からもオンライン飲み会などで交流も多いので、全社一体となって仕事をする感覚は新鮮です。
監査法人時代は、様々なクライアントを抱えて業務を行なっていましたが、今は目の前の会社の経営がうまくいって、みんなが満足して働いてくれる平和な状態を保っていきたいです。会社のために頑張りたいと思ってもらえるような会社にすることが、今の自分の使命だと思っています。
子育てと仕事はどうバランスをとっていますか?
以前は予防接種ひとつするにしても仕事の調整が難しかったのですが、今はこどもの学習のサポートにも手が回るようになりました。こどもの成長段階に合わせて必要なことに合わせられるようになったので、助かっています。
女性の公認会計士が活躍できる未来を
篠木さんからこの記事を見ている方へのメッセージはありますか?
実は公認会計士試験合格者に占める女性の割合より公認会計士として働いている女性の割合は6%ほど少ないというデータがあり、頑張って資格をとったのに仕事から一旦離れると戻ってこない女性の公認会計士がたくさんいるのです。
そんな方々の存在を知って、なんとかお手伝いできないかと思っています。
また、コロナの影響で経営が苦しくなってる会社が多い今でも「いい監査役はいませんか?」と聞かれることも多いんです。監査役はそれだけニーズのある仕事だと思います。
私がこうしてキャリアを選んで来れたように、女性の公認会計士が活躍できる選択肢はたくさんあるので、キャリアを諦めないでほしいですね。今後はそういった女性の公認会計士が活躍できる社会を作るプロジェクトにも力を入れていきたいです。