【フュービック 横山監査役インタビュー】
「もっと社会に貢献したい」監査法人から事業会社の監査役へ

株式会社フュービック
常勤監査役/公認会計士
横山 敬子

公認会計士は医師、弁護士とともに「三大国家資格」である士業の一つと言われています。公認会計士の論文試験に合格すると、まずは監査法人に就職をして、監査やアドバイザリーの経験を積むのがキャリアのスタンダードなのだそう。しかしながら監査法人で経験を積んだ後の仕事やキャリアについては、知る機会が少ないとも言われています。

現在、常勤監査役と非常勤監査役を兼任されている横山さんも、監査法人での勤務を経て、監査役というキャリアを選択されたお一人です。
「公認会計士の資格を生かしてどの土俵で関わっていきたいかが、キャリア選択のポイントです。」と語る横山さんに、監査役の働き方についてお伺いしました。

最終更新日 2020.06.11
※役職はインタビュー実施日現在のものです。
※新型コロナウイルス対策のため、Web会議ツールを利用して2020年4月15日にインタビューを実施しました。

公認会計士の資格取得後のキャリア

横山さんは一般事業会社に3年間勤務されてから、公認会計士の資格を取得されたそうですね。きっかけを教えてください。

実は新卒で就職活動した頃がちょうどバブル崩壊の後で、自分がやりたいと思う仕事に就けなかったんです。働いていく中で、やはりやりがいを感じる仕事をしたいという思いが一層強くなりました。

就職氷河期のなか、難関資格の取得が再スタートには1番手っ取り早いな、とその時はあまり深く考えないまま公認会計士試験の勉強を始めました。いろんな資格の中でも、潰しがきいて女性が働きやすいということで高校時代に先生がおすすめしていたのを覚えていたのもありましたね。

資格を取得したあとは監査法人で会計監査やIPO支援、アドバイザリー業務を経験して、設立2年目のベンチャー企業の常勤監査役に就任しました。監査法人からのキャリアとしては独立開業したり、企業のCFOなど管理部門に従事する方が多いのですが、監査法人での経験の中で、経営のトップと関わりながら会社をよくしていく立場を経験したいと思ったんです。

監査法人からベンチャー企業での常勤監査役の仕事は、どのように変わりましたか?

今までは監査法人という企業外の専門家としての立場から会計監査を行なっていました。会計監査は財務諸表という会社活動を数字で表した結果をチェックする仕事で、経営者よりも社員の方々、特に経理の方と話す機会が多かったんです。

会計監査の過程でいろいろなミスを見つけます。ミスはいろいろな形で現れるのですが大きなミスの原因を突き詰めていくと経営トップに行きつくことが多いんですよね。監査法人に勤務する公認会計士は会計監査を通じて会社をよくしたい、社会に貢献したいという思いがあるんですけど……だったら、経営トップに直接アプローチしたほうが早いし効果的だよね、と。

直接アプローチできるポジションは取締役か監査役だと考えたんですけど、監査の経験はあるものの経営執行の経験がないんですよね。監査役の方がアウトプットできるものが多いなと思いまして。

そこから創業2年目のベンチャー企業の常勤監査役になり、仕事の内容も責任の重さも大きく変わりました。監査法人はあくまで会計に関する外部専門家としての立場から複数の企業と関わるのですが、常勤監査役になるということは自分も会社の一部として常に多くの課題に向き合うことになります。多くの問題に首を突っ込まないといけません。そういう意味でとても責任は重いです。その一方で経営者の想いにも触れます。リスクをとって事業にかける想いや社員を大切にする想い。社内イベントにも参加して今まで感じることのできなかった会社との一体感というか愛社精神のようなものを感じることが多くなったんです。

日々勉強することばかりですが、経営者と一緒にかつ、客観的な立場で会社のルールや仕組みづくりに気付きを与えていく仕事にやりがいを感じています。

会社を守るために必要な「リスクに対する気付き」

常勤監査役に求められるスキルはどのようなものだと思いますか?

監査は問題を指摘するだけとも思われがちなんですけど、私は監査というものは「会社利益に貢献する重要な存在」だと思っています。

売上アップが会社利益に貢献するのはもちろんなのですが、損失を最低限にすることも会社利益を増加させることにつながります。そのために、監査役監査を行う上で、当たり前だと思わない批判的な視点を持つ意識が必要だと思っています。常勤監査役の仕事は社内で起きている課題を探すことが仕事なので、会議に出席したり、ヒアリングをしたり、コミュニケーションツールや重要な書類に目を通して、課題を見つけるよう心掛けています。

このような業務のチェックでは監査法人時代の経験が大いに役立っています。但し、問題を指摘するだけでは終わらないところが監査役の監査なので、そこからどうしようと考えている時間は長いですね。

監査役監査は「課題を見つけにいく→認識する→経営者に伝える→経営者の行動を見届ける→資料として残す」というプロセスを完了させて、ようやく責任を果たすことができるんです。もし会社に何か問題が起こってしまった場合には、監査役が問題に気付き、責任を果たしていたことが会社を守ることになります。なので、何か違和感のようなものを感じるリスク感度の高さが常勤監査役に求められるスキルでしょうか。

常に問題に対してアンテナを張って情報収集をされているんですね。

情報収集するために傾聴することは大切ですが、誰かに肩入れしていない中立的な立ち位置をキープするために、どう伝えるかも重要なスキルです。

例えば経営者と話すときに、伝え方がまずいと社員に肩入れしていそうに思われることもあるんです。それを防ぐために誰に対しても「誰か個人のためではなく、会社のために考えている」というスタンスを明確にして、視野を広く持ってもらえるよう話すよう意識しています。

常に批判的な立場を取っていると、社内の空気を乱す可能性もあるので、「会社を今よりよくするために敢えて悪いことを探している」と理解してもらえるよう務めることも、伝えるスキルのひとつだと思っています。

経営者と対話する際は、自分が会社経営をしたことがないことを弱みに感じる時も正直あるんです。立場は違うものの会社の成長を思う気持ちは一緒なんですが、本当に貢献しているのかわからなくなるときにストレスを感じることもあります。そういうときは自分自身の視野が狭くなっていることが多いですね。経営の経験がないからこそ、気付けることがあると再度思い直して向き合うことにしています。

会社にとっての常識でも、世間から見たら非常識なこともありますし、短期でなく長期を見据えた話など、様々な角度から物事を見ることが大事ですね。うまくいかないことも多く、とても根気がいりますが、それも常勤監査役の面白さではないでしょうか。

会社のために、そして自身のステップアップのために選んだ常勤と非常勤の兼任

現在はどのような働き方をされていますか?

監査役は誰かからやるべき業務を指示されるわけではないので、やることは自分で決めています。

勤務時間は9:30〜18:30で朝礼にも参加してます。私は、成長ステージでいろいろな変化を楽しめ、監査役としての業務も多い会社で働きたいと思っているので希望どおりですね。家のことはパートナーと協力して行っています。ワークライフバランスをうまくとって働くことがストレスなく長く働くためには重要です。

会社の規模、ステージによって監査役に求めるタイプや勤務形態も違うので、働く環境を選べるのも監査役の魅力だと思います。ベンチャーの場合だと時短や週3~4日勤務を希望する場合も多いですし、管理体制を構築していくステージなので監査法人時代の経験を活かすことも求められる事例もあるんです。そのため子育て中の女性会計士などは持っているスキルと、ご自身の希望する働き方に合う会社に出会うことができるのではないかと思います。

ご自身の今後のキャリアプランを経営者にしっかり伝えて、双方に期待ギャップを生じないようにすることが大切だと思います。

現在、常勤監査役と非常勤監査役を兼任されている横山さん。兼任された経緯を教えてください。

4年間の任期満了まで常勤監査役を勤めていたのですが、同じ会社で非常勤監査役に就任することになったんです。それと同時に他の会社での常勤監査役での就任も決まりました。

常勤監査役を降りた理由は、経営者や従業員との距離が近くなりすぎたと感じたからです。常勤監査役が長期間勤めることで効率的に監査業務を行えますし、また経営者と良好な関係が築けていると評価もされます。一方で業務を理解しているが故に問題を見過ごしたり、経営者との馴れ合いが生じているのではないか、とのマイナスの評価を受けることもあります。従業員が20人にも満たない時期から入りましたので、経営者や従業員との距離は当然近いわけです。会社の今後4年間のコーポレートガバナンスを考えると、新しい監査役により新しい目で監査をしたほうが会社のためにはいいだろうと判断しました。そうはいっても、常勤監査役が抜けてしまうのはガバナンス機能の低下にもつながりかねないので、完全に辞めるのではなく、非常勤として常勤監査役をサポートしつつ、今までとは異なる視点から監査をすることを経営者に伝え、そのようになりました。

一般的に、非常勤監査役には常勤監査役より客観的な立場から、過去の会社経営経験や弁護士、会計士などの専門的な知見を生かしたガバナンスの機能を発揮することが求められます。

だからこそ、違う会社の常勤監査役として就任することで、過去の常勤監査役としての経験や会計士としての知見を活かしつつ、自分のステップアップも図っていきたいと思っています。兼任することで監査役としての視野を広く持ち、アウトプットの引き出しの数を増やたいですね。

「あなたにお願いしたい」と求められる監査役へ

横山さんにとって、仕事のモチベーションが上がる時はどんな時でしょうか。

会社の成長を感じたときですね。課題の存在に気付かなかった企業が、社内外からの指摘により課題に気付き、改善される。今度は自分たちで課題に気付き、改善するようになる。そういうサイクルが回るようになるのを見ると、とてもうれしくなります。

また、会社が成長すると求められるコーポレートガバナンスも変わります。より高度なガバナンス機能が求められるようになると自分自身も成長が必要になるので身が引き締まります。ガバナンスの知識のインプットも必要なんですが、研修に行ったり、大企業の監査役の話を聞いたりして、会社に役立つ情報などを見つけるとモチベーションが上がりますね。

他にも、親身に悩みを聞いていた社員が「あの監査役がいたから救われた」と言っていたと報告が来た時は、報われる思いでした。個人に肩入れしない厳しい立場をとっていく仕事と割り切ることも大切ですが、できる限り多くの声を聞いてみんなが勤めやすい会社にしていきたいです。

監査役は表立って結果が評価される仕事ではないですが、いつか今まで仕事でつながりのあった方からや経営者や監査役から直接「この人にお願いしたい」と就任依頼されるような監査役になりたいと思っています。会社のステージも種類も様々ですが、どんな会社でもその環境にふさわしいガバナンス機能が発揮できるようありたいです。そのためにも今は、常勤・非常勤の両方を活かして目一杯のことをやって会社の利益に貢献していきたいと思います。

キャリアも信頼も構築させていくためには日々の積み重ねが大切なので、どういった環境でもパフォーマンスを発揮できるように、今後も向き合っていきます。

       

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