【KeePer技研 大島社外取締役インタビュー】
「生きてきた人生すべてが役に立つ」議員と社外取締役の共通点とは

KeePer技研株式会社
社外取締役 大島もえ

26歳で市議会議員に当選されて以来、市議として活動されてきた大島もえさん。
現在KeePer技研株式会社の社外取締役として活躍される中で、議員と社外取締役の仕事には共通点があるとおっしゃいます。インタビューを通してその心を紐解きました。

最終更新日 2023.3.3
※役職はインタビュー実施日現在のものです。

政治家のイメージを身近な人に変えたい。「ひまわり号」で活動する日々。

26歳という若さで愛知県尾張旭市の市議会議員に初当選されて以来、市議として活動していらっしゃったのですね。どのようなきっかけで政治の世界に入られたのですか。

私が14歳の時に、母が愛知県長久手市の町議会議員(市制施行前)になりました。
その後、母は衆議院議員として活動していた時期があるのですが、国政となると地元と東京の2拠点を行き来するというハードな生活になります。
そこで、2拠点にそれぞれスタッフが必要となり、かつ無理を言える秘書が欲しいと要請され、娘である私が2年間だけの期限付きで手伝いをしたのが始まりです。
国家をかけた重要な審議がされている場を目の当たりにして、単なる親の職業だった政治というものが徐々に自分事になっていきました。
その後、二世議員としてではなく自分の意志で出馬するという意味で、母とは地域を変えるために隣の尾張旭市に引っ越して初めての市議会議員選挙に臨みました。

政治家というのは社会の困りごとを解決していく立場だと思いますが、20代でそういった問題意識をお持ちだったのでしょうか。

入り口が国政だったというのもあると思いますが、公権力や国家権力が人々の尊厳に介入する力さえも持っていることに問題意識を持っていました。
政治が動き、制度ができていくのは良いことですが、時にはそれによって不利益を被ったり尊厳が損なわれたりする人も出てくるという側面にも謙虚に目を向けたいと思っていました。
そこで、まだ20代で24時間動けて元気な私は、困りごとという点では当事者性が乏しいものの、様々な市民活動の現場でとにかくいろんな人に話を聞きに行く、人々の営みを知ることに注力しました。

なるほど、困りごとを探すところからスタートされたのですね。

はい。背景の異なる人生を生きているそれぞれの暮らしの当事者が何を感じて何に困っているかを知った後は、それを見える化するということをしていきました。
それと同時に、政治家の仕事自体の見える化もしていきました。
スピーカーの付いた選挙カーは少し威圧的なイメージがあるので、可愛らしい車を宣伝カーにしたら「ひまわり号」と呼ばれるようになりました。365日仕事に行くにもスーパーに行くにも乗って、どこで何をしているのかが見えるようにしました。
私は、政治家のイメージを特別な人ではなく身近な人に変えたいと思っており、徐々に私の車を目印に「あ、もえさん今日もいるね」と身近に感じていただけるようになっていきました。

マイノリティの自分だからこそできた、「気づく」ということ

議員になられた頃は、周りは親ほど年の離れた男性ばかりだったのではないですか。

そうですね。議会、職員には年の離れた男性が多かったですし、その中では私は常にマイノリティでした。
有権者の方にも、いわゆる「ステレオタイプ」な方はいらっしゃるので「若い女の子に何が分かるのか」といった厳しいご意見もありました。
一方で、私と同じ属性を持つ人からは応援していただき易いという面もありました。
さらにラッキーなのは、当時27議席あった中でキャラクターが誰とも被らなかったので、常にユニークな存在でいられたことです。
選挙ポスターも誰も使っていないピンクを使うことで、目立たせることができました。
また、在任中に結婚して4人の子どもを出産したのですが、それ自体がユニークなキャリアにもなったので、各地で働くママの困りごとを見える化してネットワークを作るということにも役立ったと思います。

議員活動をしながら4人も出産されたとのことですが、会社ではない議会という場では産休・育休という制度もないですよね。

そうなんです。議員は労働者ではないため労働基準法の適用対象外で、そういった制度で守られる存在ではありませんでした。
そこで出産議員ネットワークの皆さんで働きかけて、会議規則を変えることに成功しました。
これまでは日単位で欠席届を出す仕組みだったのですが、出産というのはある一定の期間(帯)で休むものですから、期間の単位で届けられるようになりました。
「出産」が議会の欠席理由として制度として認めていただけるようになったというのは多様な背景・ライフステージに在る人が議会に参画するための環境整備としては画期的なことです。
併せて育児、看護、介護および配偶者の出産補助等も欠席理由に加わりました。
またこういった活動の中で、フリーランスや経営者として働いている人も労基法の対象外なので同じことに困っていると気づくことができ、働きかけを始めることにもつながりました。

自分の困りごととその解決策を、一般化していったのですね。

はい。自分の困りごとだけを解決するのではなく、こういった困りごととそれに対する解決を一般化していくことが重要だと考えています。
直接私たちの働きかけが影響したわけではありませんが、時を同じくして、産休中の国民年金保険料が免除になったりもしました。(国民”健康”保険料の免除は、2024年1月~の予定)
これまでの社会保障制度というのは主に高齢の男性が作ってきた訳ですが、やはり出産・育児のメカニズムを知らない人ばかりで作っているので盲点があるのは仕方ない側面もあるかと思います。
そういった様々な現場において、マイノリティであった女性が入っていった結果、近年は制度の盲点に気づくことができるようになってきているように感じます。

社外取締役と議員の共通点

社外取締役のお仕事はどのようなきっかけでお受けになったのですか。

2019年に市長選に敗れた後に人材採用サイトに登録したのですが、随分年数が経ってから連絡をいただき、大変驚きました。初めは秘書経験があるということで秘書としての採用面談を受けました。
会長をはじめとした経営陣と1時間くらい面談をする中で、社外取締役ではどうかという話に変わっていったんです。
会長が非常に従業員の皆さんを大事にされる方で、支配する側・される側になりたくないといつもおっしゃるのですが、「従業員を数として見るのではなく一人ひとりとして見たい、そういう視点で会社の外から見てくれる人が欲しい」と考えていたようです。
私も政治思想として「労働を消耗品にしない」ことが重要だと考えていたので、そこが一致して就任に至りました。

先ほど、各環境におけるマイノリティの問題に気づくことの重要性についてお話されていましたが、現在の社外取締役としての仕事の中でも活かされているのではないですか。

たまたまですが、現在の取締役会は女性役員が私一人という環境です。
KeePer技研は車の洗車やコーティングを扱う会社ですが、近年は「車好きの人の嗜好品からすべての人の日用品へ」としてブランドイメージの転換を図っているところで、私が女性全員を代表できるわけではないものの、これまで縁遠かった方々と共通点を持っているという立場を活かすことができれば良いと思っています。

市長選に臨まれたとのお話がありましたが、政治の世界に戻られる予定はありますか。

実は、また地方政治の現場に戻りたいと考えています。社外取締役との兼業も許されています。
面談の時も、まだ政治家を引退する気持ちに至っていないと正直に申し上げたところ、「会社としてもウェルカムなのでどんどんチャレンジしてください」と言っていただけました。
理解ある会社とのご縁に恵まれたと思っています。

これまで、政治を身近にすべく活動していらっしゃいましたが、経営と現場の関係性についてはどうお考えですか。

KeePer技研は洗車やコーティングの店舗が現場です。
会長が、「売り上げを上げているのは現場だから」と、現場に対するリスペクトをよく言葉にされることもあり、私も年末の繁忙期に、タオルの洗濯だけでもお手伝いできればと店舗へ伺いました。
ですが、タオルの洗濯もきちんとマニュアルがあって、研修を受けていない私は全然役に立てなかったんです。
ただ、私は政治活動を通して知らないことを恥と思わない図々しさが身についているので、どこにでも飛び込んで、皆さんの経験を教えていただきたいと思っています。
そうした皆さんの経験に触れながら、皆さんの困りごとやリクエストを汲み取って会社に反映するという、私の立場でできることをやっていくことで、これまでの経験を活かせるのではないかと思います。

議員と社外取締役の仕事には共通点がありそうですね。

はい、非常に親和性があって類似していると思います。
会長・社長とその他役員、従業員の皆さんが、地方政治における市長と職員だとしたら、具体的な現場を持っておらず、外側からの視点で問題を発議して議論をする立場である社外取締役は、さながら地方政治における議員のような位置づけだと気づきました。
上場した企業は、会社とお客様の2軸だけでなく社会への貢献という新しい軸が増えることになります。
ですから、地方政治にとって、外の目からパブリックな価値を追求するための提言をするのが議員だとすれば、上場した企業にとっては、その新しい軸に対してハラスメント対策やジェンダーギャップ解消をはじめとする人権尊重などの社会的価値をどのように開示し定義づけていくかを考えていくのが役員であるという意味で、共通していると思います。
社会的価値を考える上では、コーポレートガバナンスの中に多様性や持続可能性という指標も必要になります。

社外取締役という働き方

4人のお子さんを持ち、他にも様々な活動をされている大島さんとして、社外取締役という働き方をどのようにとらえていますか。

そうですね。昔から、人と会ったりする仕事は日中帯に、その後一旦家庭に戻って21時以降に自分の仕事をするというスタイルが滲み付いているので、そこは社外取締役になったとしても変わりません。
やり方によっては家庭だけでなくほかの活動にも時間を割けるという意味で、様々なことを両立しやすい働き方ができると思います。そして、365日、いつもアンテナを張っていることで、他の活動中に得られた思わぬ情報や人脈が、社外役員としても有益な事物としてつながり、還元できることもあります。
私は「家庭経営」と「自分の人生」の2つの主人公であるという意識をずっと持っていて、時間短縮の方法としては、子どもたちにもチームの一員として家事を引き算してもらうような家庭経営をしています。

これから社外取締役にチャレンジする女性に向けて、メッセージをお願いします。

「生きてきた人生すべてが役に立つ」と伝えたいです。
会社が相対するお客様も従業員も生活者なので、一生活者であるあなたが感じてきたことや感性、その人丸ごとが活きる仕事だと思います。
どんな人も、家庭人、子どもの親、要介護の親を持つ子ども…などその人の属性や背景を持っていて、そこで感じてきたことや経験が、正解のない課題へ向き合う鍵としてきっと役に立ちます。
必ずしも経営の数字にコミットすることだけが仕事ではありません。
自分しか持っていない視点で考えることを強みと捉えて、自分に何かが足りないから自信がないというのではなく、持っているものを強化して差し出せばいいと思うんです。
私もそうやって自分を励ましていますので、ぜひ臆せずチャレンジしていただきたいですね。

       

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