【LOIVE 山本常勤監査役インタビュー】
ママの輝きが子供の笑顔につながる
―キャリア像と企業理念が響き合う先へ
株式会社LOIVE
常勤監査役 山本 雅子
監査法人での経験、ニューヨークでの就職、そして独立と、キャリアの節目ごとに新しい挑戦を選んできた山本さん。
初めての職務に不安を抱きながらも、経営者の理念に共鳴し常勤監査役の一歩を踏み出した体験談をお話しくださいました。
きっと、これから挑戦するあなたの背中をやさしく押してくれるはずです。
最終更新日 2025.9.19
※役職はインタビュー実施日現在のものです。
監査法人でのキャリアと、海外生活が変えた働き方への意識
キャリアのスタートは監査法人だそうですね。
はい。新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)に入所し、総合商社や製薬会社の会計監査を担当していました。
所属が国際部だったので、海外との橋渡しや、海外から依頼を受けた業務にも携わっていました。
2005年から2015年までの10年間在籍しましたが、その間に2人の子供を出産して育休・産休を取っていたので、実働は8年少々です。
その後、夫の転勤に伴い監査法人を辞めて、みずほ銀行ニューヨーク支店に入行しました。
海外赴任にお子さんを連れて帯同するだけでも大変なことだと思いますが、現地で就職もされたのですね。
ニューヨークに渡った時はちょうど2人目の育休中で、そのまま退職して帯同しました。
最初の数か月はいわゆる“駐在妻”生活を楽しみましたが、せっかくなので働いてみようと思い直し、就労ビザを取得して銀行で働きました。勤務したのは2年ほどです。
銀行を選んだのは、公認会計士として数字を扱う仕事に親和性があったからです。
ニューヨークでの生活を通して、働き方への意識に変化はありましたか。
ありましたね。現地採用の方々は男女の区別なく働き、男性も当たり前に育児をしていました。
子供の熱が出れば男性社員も帰宅しますし、ナニーに預けて働くことが当たり前でした。
日本では「女性が育休を取るのが前提」で、そこに男性の育休が加わるかどうかという発想ですが、むしろ女性も「働きたいなら育休を取らない選択」があっていいと感じるようになりました。
ブランクが長いほど復職の負担も増しますし、その点でも「預けて働く」ことへの抵抗がなくなったと思います。
理念への共感から始まった、監査役のキャリア
帰国後は監査法人に戻らず、独立されたそうですね。
2018年に帰国しましたが、独立して監査法人から業務委託の仕事を請け負いました。
保育園探しが大変でしたし、フルタイムで就職するより独立する方が早く自由に働けたからです。
独立後、すぐに監査役の道に入られたわけではないのですね。
はい。独立して5年くらいは監査法人の仕事をメインで請け負っていました。
「監査役をやってみたいな」と漠然と考えていましたが、具体的に動いてはいませんでした。
そんな時に、監査法人時代の同僚で既に監査役を始めていた女性から声をかけてもらったんです。
最初は非常勤からと考えていましたが、「常勤の方が面白い、若いうちに始めた方がいい」と強く勧められました。
「いきなり常勤なんて……」とお断りもしたのですがその後も何度か打診いただいて、まずはお話だけでも聞いてみようと面談に臨んだのが当社(当時、株式会社ライフクリエイト)でした。
実際に面談されて、監査役への意欲は湧きましたか。
面談してみて、社長のパワフルさと、女性を輝かせたいという一心で事業に邁進している姿に深く感銘を受けました。
当社はフィットネススタジオを全国で運営しており、社長をはじめとして女性社員の割合が99%という女性活躍組織です。「自分を愛し、輝く女性を創る。」をミッションとし、「女性の新しい生き方を通して世の中に愛と自信があふれ、子供たちが夢を描く社会へ。」をビジョンに掲げており、強く惹かれました。
社員だけでなく、その先の子供たちへの影響まで視野に入れているなんて凄いですね。
そうなんです。お母さんがキラキラ輝いて楽しそうにしていることは、子供にとっても幸せにつながる、そう思っていた私にこの理念はとても響きました。
この会社でなかったら、常勤監査役を引き受けていなかったかもしれません。
きっかけこそ元同僚の勧めでしたが、最終的に就任を決めたのは強く理念に共感したからでした。
やはり会社を選ぶにあたり、事業と経営者の想いに共感できるかどうかはとても重要だと思います。
責任が重い仕事でもあるので、共感できていないと頑張れないですからね。
“聴く”から始まる監査役の仕事
実際に常勤監査役に就任されて、いかがでしたか。
就任した2023年は、これからIPOを目指す段階だった (※)こともあり、とても刺激的でした。
日々いろいろなことが動き、会社の成長スピードも速く、社員も店舗もどんどんと増え、こんな成長期に関われることはなかなかないと思いました。
就任した時は六本木の小さなオフィスでしたが、その後代官山を経て今のオフィスに。
わずか2年で2回引っ越しを経験しました。毎年広くなっていくオフィスからも、成長を感じます。
※LOIVE(当時、株式会社ライフクリエイト)は、2025年4月に東京証券取引所グロース市場に上場
IPOにおいて、監査役はかなり重要な役割を担われるのではないですか。
証券会社の方とやり取りをする機会など、普段できない経験ができました。
大量の質問に対応することは大変でしたが、今後監査役を務めていく上での視野も広がったように思います。
また上場後は一般株主の視点をより意識するようになりました。
監査法人時代から上場・非上場で監査のアプローチを変えていたので基礎知識はありましたが、同じく当社で常勤監査役を務める先輩からも具体的なアドバイスをいただき、日々学びながら進めています。
仕事の面白さはどんなところに感じますか。
経営を会社の“中から”見られる点が面白いです。
監査法人時代は数字や開示の確認を社外の視点から行っていましたが、今は取締役会や経営会議に参加して経営者の視点やリスクへの意識を直接感じられます。
業務を進める上で心がけていることなどはありますか。
人間関係を自分から作りに行くことです。
監査役には自然に情報が集まらないので、こちらから動かないと何も入ってきません。
部長クラスとは年に一度面談の機会を設けていますが、ほかの従業員の方々ともお話しをしたいので、社内イベントなどに積極的に参加しています。
従業員の方々とお話しされるときに意識されることなどあるのでしょうか。
当社はフィットネススタジオの店舗が多く、全国で若い社員が一生懸命働いているので、「頑張っている彼らを応援したい」という気持ちで監査役の業務に当たっています。
有名な話ですが、監査を意味する「audit(オーディット)」の語源はラテン語で「聴く」なのだそうです。
ですから耳を傾ける、傾聴することを意識しています。
「困っていることはある?」とか、「お客さんとどんな話をするの?」といった雑談をしていく中で、正直な声を聴くことができた時は嬉しいですね。
監査する立場というよりは、日々どうやって運営しているのかを教えてもらう立場で話を聴きたいと思っています。
「やってみないと始まらない」不安を自信に変えるには
今後どのようにお仕事をしていきたいですか。
そうですね。ほかの会社でも非常勤監査役を経験したいと考えています。
公開されている事例などからある程度勉強もできるのですが、監査役の仕事はクローズドなので、実際に入ってみないと分からないことも多くあります。
ですから他社でも監査役としての経験を積んで、当社のガバナンスにも活かしたいと思っています。また、自分の事務所で請け負っている会計監査の仕事も続けていきたいです。
やはり会計の基準は頻繁に変わるので、触れていないと忘れてしまいますし、机上で学ぶのと実務としてやっているのとでは習得度が大きく違います。
今後、常勤監査役を目指す女性にメッセージをお願いします。
私もそうでしたが、経験のないことに挑戦するのは自信がないですし、不安もあり、怖いですよね。
でもやってみないと何も始まらないし、経験豊富な人だって最初は未経験だったはずなので、少しでも興味があるならチャレンジすることをお勧めします。私が不安に思っていたのは、何をやったらいいのか分からないということでした。
監査役監査基準というものがあって、期待されている役割などは明文化されているのですが、具体的に何をするかについては漠然としているんです。
実務として何をするかについては、会社の文化、規模、成長段階によって違うので、そこまで明確化されていないのも当然だと、今では分かりますが、始めてみるまではイメージできていませんでした。
どうやってその不安を払しょくしていったのか、ぜひ教えてください。
当社の場合は既にもう一人の常勤監査役がいらっしゃったので、その方と相談しながら私がすべき仕事を具体化していくことができました。
また、常勤監査役として活躍している監査法人時代の同僚たちに積極的に会いに行き、何をしているのか教えてもらったりもしました。
こちらは何度も頼らせてもらったので、監査法人時代の同僚の皆さんには本当に感謝しています。真似して取り入れてみたり、アレンジを加えたり、そうやって日々試行錯誤する中で、自分の監査役像を模索しているところです。
監査役は上司もいないし、誰も教えてくれないところが辛くもありますが、初めから完璧じゃなくても大丈夫。
経験を重ねて真摯に向き合っていけば、不安は自信に変わっていくはずです。
取材・文: 大場 安希子
写真: 田中 有子