【ストックマーク 鈴木常勤監査役インタビュー】
監査法人から30歳で常勤監査役へ。
対話で組織を支える私のスタイル

ストックマーク株式会社
常勤監査役 鈴木 愛海

監査法人を経て独立後、30歳でストックマークの常勤監査役に就任された鈴木さん。
経営層だけでなく現場社員からも自然と相談が寄せられる中、対話を重ねながら組織の課題に向き合われています。
休日は愛車のスポーツカーを乗りこなすというアクティブな素顔も持ち合わせる鈴木さんに、若くして監査役を目指した理由や仕事の魅力について伺いました。

最終更新日 2026.9.30
※役職はインタビュー実施日現在のものです。

「仕組みづくり」の面白さに気づいた監査法人時代

これまでのご経歴から教えてください。

EY新日本有限責任監査法人で6年ほど、国内企業の監査に携わりました。
最初の3年ほどは上場企業の監査のみを担当していたのですが、4年目にご縁があり、女性社長のIPO準備企業の主査を担当させていただくことになったんです。
直前々期(N-2期)から上場後まで携わったのですが、内部統制未整備の状態から会社の方々と一緒に仕組みを作ったり、「こういうフローにしていきましょう」と議論したりするのがとても楽しくて。
スタートアップ企業は「自分たちで何とかしなきゃ」という危機感もあり、従業員の方々も変わろうとする意思が強いんですよね。
そうしたマインドや、仕組みづくりができるIPO準備企業っていいなと思うようになりました。

そちらでの経験が転機になったのですね。

そうですね。もちろん監査そのものも好きでしたが、間違いを見つけて直して終わりではなく、「なぜこうなったのか」「今後起きないようにするには、どういう仕組みにすればいいのか」と考える方が面白いと気づき、内部統制がすごく好きになっていきました。
その後独立してからも、内部統制やJ-SOXの再構築などのコンサルティングを続けています。

自分の殻を破りたい。共感したストックマークの大きなミッション

独立してすぐに監査役を目指されたのですか。

はい。コンサルティングの仕事を受けつつ、IPO準備企業に絞って監査役に応募していきました。
対象を絞ったのは、もちろん仕組みづくりへの意欲もありましたが、若さや経験不足から、いきなり上場企業に就任するのは難しいと考えたためです。
また応募先としては、監査法人時代に担当していた情報通信業のほか、小売、外食、製造業など、自分がある程度業界を知っている会社を中心に見ていました。
一度他社の非常勤監査役に採用いただいた後、半年ほど経った2023年2月にストックマークの常勤監査役に就任しました。

ストックマークを選ばれた決め手は何だったのでしょうか。

ストックマークは「価値創造の仕組みを再発明し、人類を前進させる」という非常に大きなミッションを掲げています。
初めて聞いたときは、「すごい野望だな」と思いました。
ターゲット顧客を大企業に絞り、組織の仕組みをAIで改善し、再構築していくことで人類を前進させる、という理念です。

私自身、監査法人でさまざまな企業を見てきた中で、大企業ならではの組織構造の固さや、変えたくてもなかなか変えられない仕組みに、もどかしさを感じることがありました。
ストックマークは、まさにそうした大企業をターゲットに、AIの力で組織の仕組みそのものを変えようとしている会社です。
私が課題を感じていた「固い殻」に真正面から立ち向かい、それを破ろうとしている。
自分自身も、何かをきっかけに殻を破りたい、誰かの役に立つこと、社会に貢献することができたらと考えていたので、大企業の固い殻を破ろうとしているこのミッションに強く共感しました。

30歳の監査役。「監査法人を出たばかりで何ができるの?」

鈴木さんがストックマークの監査役になられたのは30歳頃ですよね。若くして監査役を目指すことに難しさはありましたか。

やはり「監査法人を出たばかりで何ができるの?」と懐疑的に見られることは多かったです。「経理部や内部監査室の方がいいのでは?」と言われることもありました。
確かに、監査法人しか経験していないと、「事業会社のことを知らないのでは」と思われるかもしれません。
ですが、監査法人では社長や監査役へのインタビューもしますし、事業計画も見ます。
計画や資料がなかなか出てこなければ、「何が行き詰まっているのか」「どこに原因があるのか」を解明していくこともします。
取締役会の議事録や稟議も見るし、人事上のトラブルや訴訟など、会社で起きているさまざまな問題にも触れます。
ですから、組織の中で物事が進まない理由や、会社で起こり得る問題を、実はかなり幅広く、全方位的に見てきているんです。

会社を俯瞰してみるということについて、幅広くトレーニングを積まれているのですね。

そうです。以前、「会計監査は企業ドクターのような仕事だ」と表現している方がいて、まさにそうだなと思いました。
悪いところを見つけるだけではなく、「なぜ悪くなったのか」「原因を直さなければ、また同じことが起きる」と考える。
内部統制も同じです。
そうした企業ドクターとしての経験があるので問題なく業務を進め、貢献できるとアピールしていました。

「まずは聞く、そして自分も動く」ことで積み重ねてきた信頼

常勤監査役として、仕事の面白さはどんなところに感じますか。

監査役というポジションは、会社全体を見渡し、「謎探し」のように問題の根本を見つけて解決に導くことができます。
「うまくいっていないこと」とその根本原因が離れたところにあるとしても、監査役の立ち位置ならその根本に打ち手を投じられるのが醍醐味です。

また監査法人時代は、事業計画や予算などのあらゆる資料について、議論されて出来上がったものを見る立場でしたが、今は、意見がまとまっていない段階や、議論がぶつかる現場に立ち会うことができます。
「この人にはこの意見があって、こちらには別の意見がある」というのが見えてくる。人間同士の生々しいやり取りを感じられることがとても面白いです。

もちろん、本当に問題になることがあれば意見しますが、当社は情報がかなりオープンにされているので、日頃から社内で何が起きているかを把握しやすいんです。
ですから、議論の場に行く前に「問題はここだな」とある程度検討を付けた上で臨むことも多々あります。

鈴木さんがやりがいを感じそうな、課題解決のフィールドが広がっていますね。

そうですね。現場の社員から連絡をもらうこともあります。
先日も夜に、「遅い時間にすみません、こういう状況なのですが、まだ監査役に口を出してもらう段階ではないですよね」と相談が来ました。
「まずは自分で体当たりしてきて、それでもダメだったら入るよ」と伝えると、自分で頑張って折り合いを付けられたと報告してくれました。
経営層からだけでなく、現場のメンバーが監査役に直接相談に来てくれるのは、本当に嬉しいですし、この仕事をやっていて良かったなと思う瞬間です。

現場の社員の方から監査役に直接相談が持ちかけられるなんてすごいです。どのように関係を築かれたのですか。

当社は若い社員が多いので、同年代の私に話しやすいということもあるかもしれませんが、最初からこのような関係だったわけではありません。
ただ、監査法人時代から気をつけていたのは、決めつけたり、強制したりしないことです。
スタートアップ企業には、内部統制をはじめとして未完成なことが多くありますが、「何を優先すべきなのか」「これをやりたいのにできない理由は何なのか」と聞いていく。
専門家はつい「駄目なものは駄目」「すぐやめなさい」と言いたくなることがありますが、そこを一度我慢して、静かに話を聞いてみるようにしています。

そして、自分でも手を動かすことも大事だと思います。
困っている人がいたら、「こんな感じかな」と自分でも考え、アウトプットしてみる。
そうしているうちに、「この人なら味方になってくれそう」「迷ったら監査役に聞いてみよう」と思ってもらえるようになったのかもしれません。
今ではエンジニアから、プロダクト設計におけるログやデータの保存・削除について相談を受けることもあります。

聞くことと対話で解決に導くというのは、鈴木さんならではの監査役スタイルですね。

実は監査法人を辞める頃、心理カウンセラーの仕事にも興味がありました。
話を聞きながら、「本当は何に困っているのか」「どうしたいのか」を見つけていくことに関心があったんです。
ただ、単に悩みを聞くだけではなく、私は「何かを解決するための対話」がしたかったのだと思います。

監査役について先輩に相談したとき、「監査役はものすごく相談を受ける仕事だから、向いているのでは」と言われたことも、挑戦するきっかけの一つになりました。
実際にやってみると、対話しながら問題の原因を探して、解決する方向を一緒に考えるという点で、コンサルティングやカウンセリングと通じる部分があると感じます。

自分の経験を強みに変えて、監査役というキャリアへ

働き方という面で、監査役のお仕事はいかがですか。

私はせっかちで「やりたいことは全部やりたい」タイプなので、監査役という裁量のあるポジションはとても合っています。
役員は勤怠の拘束がないため、平日は相談に乗ったり対話に充てたりして、週末に腰を据えて作業をすることも可能です。
自分のペースで自由に時間をコントロールできる仕事だと思います。

今後やってみたいことなど、展望はありますか。

監査役の仕事が楽しいので、続けていきたいですね。
ですが、関係構築には時間がかかりますし、会社を次々と変えていくよりも、社員の方々が相談してくれる関係性までたどり着けたこの会社で、さらにじっくりと向き合いたいと考えています。

最後に、これから常勤監査役を目指す女性へメッセージをお願いします。

監査役は、「やりたいことが何でもできる、いいポジション」です。
何をしているのかわかりにくい仕事なので、「自分に務まるのかな」と不安に思う方もいるかもしれません。私自身も、監査法人しか経験がない中で挑戦しました。
でも、これまでのキャリアを一つひとつ振り返ってみると、監査役につながる経験は意外とたくさんあります。
自分が培ってきた視点や強みを、あまり狭く捉えないことが大事です。

また、スタートアップを選ぶのであれば、社員と年代が近いことが相談のしやすさにつながるなど、若いからこそ発揮できる強みもあると思います。
「自分の経験をこう活かせる」と自信を持って、ぜひ監査役という新しいキャリアに飛び込んでみてほしいですね。

取材・文: 大場 安希子
写真:  田中 有子

       

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