【MIRARTHホールディングス 三浦常勤監査役インタビュー】
専門知識を「伝わる言葉」に。~会社の
最善と真摯に向き合う監査役の対話術

MIRARTHホールディングス株式会社
常勤監査役 三浦 由布子

監査法人から外資系企業の経理を経て、常勤監査役となった三浦さん。
キャリアの岐路で得た「人との縁」を大切にしながら、公認会計士としての専門性を武器に企業の健全な成長を支えています。
スタートアップと上場企業における監査役業務の違いや、専門知識をいかにして「経営陣に伝わる言葉」へと変えていったのか、そして小学生のお子さんを育てながら柔軟に働くスタイルなど、日々の挑戦についてお話しくださいました。

最終更新日 2026.4.20
※役職はインタビュー実施日現在のものです。

「会計で創造性を発揮する」キャリアを目指して

キャリアのスタートは監査法人だそうですね。

はい、監査法人では主に外資系のクライアントを担当し、スタッフとして監査実務を経験した後、現場主査としてチームをまとめる役割を担っていました。
7年ほど勤めた後、事業会社の経理部へ転職しました。

監査法人でマネージャーを目指す方も多いと思いますが、なぜ事業会社へ移られたのでしょうか。

もともと監査法人に長く留まるつもりはなく、会計で創造性を発揮するような仕事をしたいと考えていました。
「会社の外側からチェックする」よりも、自ら「主体的に会計数値を作る」側に回りたかったんです。
監査法人の業務を通じて様々な企業を見る中で、特に外資系の製薬会社は女性にとって働きやすい環境が整備されている印象がありました。
私自身もそうした環境で主体的に会計に関わりたいと考え、ノバルティスファーマ株式会社のコーポレート経理部に転職を決めました。

「会計で創造性を発揮する」とは、具体的にどのようなことですか。

転職した製薬会社では、1人が会社1社分の財務諸表作成を丸ごと担当するスタイルでした。
ですからレポート作成を自分のペースで進められましたし、何より「もっとこうすれば効率的になる」という仕組みづくりを自分の裁量で決めることができたんです。
自分で工夫して1つの会社の会計数値を作り上げていくプロセスはとても創造的で、監査法人とは異なる面白さがありました。

育児との両立、そして「監査役」という選択肢との出会い

その後、2019年に初めて常勤監査役に就任されていますね。きっかけは何だったのでしょう。

製薬会社時代に2度の産休・育休を取得したのですが、仕事と育児の両立という壁に直面したことがきっかけでした。
外資系企業の経理という仕事の特性上、第4営業日までに本国の親会社へレポートを出すといった極めてタイトな締め切りが毎月あります。
子どもの急な発熱や行事が重なるリスクが高く、出産前と同じように働けるイメージがどうしても持てませんでした。
そんな時、常勤監査役としてIPOを成功させた女性会計士の先輩からお話を伺い、「この働き方なら専門性を活かしつつ、今の自分に相応しい働き方ができる」と思ったんです。
そこからは周囲に「監査役になりたい」と伝えるようにし、その結果、知人の会計士からの紹介でIPO準備中のスタートアップ企業の常勤監査役に就任が決まりました。

未知の世界に飛び込むにあたり、不安はありませんでしたか。

最も気になっていたのは、監査役の法的責任でした。
そこで、すでに監査役を務めている先輩方を何人も訪ねて、具体的にどんな苦労があるのか、どうリスクを回避すべきか、といったことを直接伺いました。
判例なども自分で調べた結果、「真摯に、真面目に監査を行っていれば、責任追及される可能性は低い。自分の頑張り次第でクリアできる」と確信を持つことができ、監査役の世界に飛び込むことにしました。

専門性以上に求められるコミュニケーション能力

実際に監査役になってみて、想像と違ったことはありますか。

最初は会計士としての専門的な判断が仕事の主軸になると思っていたのですが、実際はそれ以上に「コミュニケーション能力」が問われる職務だということに驚きました。

どんな方々とのコミュニケーションが必要になるのでしょうか。

経営陣はもちろんのこと、社員の皆さんと話すことも多くあります。
監査役に自ら積極的に話しかけてくれる人はなかなかいません。
こちらから積極的に話しかけに行かないと、何も情報が入ってこないんです。
特に現場の社員の方々との対話は重要です。
監査役という立場上、経営陣とは「指摘する・される」という関係になりがちですが、社員の方々とは利害なくフラットに話すことができるので、その中で教えていただく現場のリアルな動きが、監査の精度を高める貴重な情報源となっています。

IPO準備企業とプライム上場企業、それぞれの監査役の難しさ

現在のMIRARTHホールディングスの常勤監査役に就任されたのが2020年ですね。

はい。実は最初の会社のIPO準備が、コロナ禍により先行き不透明になったんです。
常勤監査役は上場という目標があってこその役割です。
走り始めた監査役というキャリアをどう継続するかを考えていた時に、当時のタカラレーベン(現MIRARTHホールディングス)の監査役の方々からお声がけをいただきました。
面談でお会いしたお二人は、ちょうど私の父と同じくらいの年齢で、私に対し娘のように接してくださいました。
その温かいお人柄に触れ、「この方たちと一緒に働きたい」と心から感じたことが、現在のMIRARTHホールディングスへ参画するご縁となりました。

前任がスタートアップだったのに対し、こちらはプライム上場企業ですね。役割にどのような違いがありますか。

全く違いますね。IPO準備会社は組織や会社の仕組みがまだまだ整備途上なので、監査役が自ら手を動かして仕組みづくりを手伝う場面が多くありました。
また会社の理解という点では、規模が小さい分、全体を把握しやすかったと思います。
一方で現在のプライム上場企業であるMIRARTHホールディングスは、組織が巨大で、自分から動かなければ何も見えません。
ただ、体制や仕組みは整っているので、「取締役の職務執行の監督」や「コンプライアンスの是正」といった本来の監査役業務に集中できている手応えがあります。

上場企業ならではの苦労はありますか。

外部の力を借りずに、自分自身の力だけで周囲を納得させなければならない点ですね。
IPO準備会社であれば、主幹事証券会社が強力なパートナーとして伴走してくれます。
例えば、監査役の指摘に対して、経営陣との間で優先順位の捉え方に相違が生じた際など、証券会社の力を借りて是正を促すという手法も選択肢にありました。

しかし、すでに上場している今の環境では、そうした外部の「後ろ盾」に頼ることはできないので、自分の力で経営陣と向き合い、解決へ導く必要があります。
ですから、経営陣に対して専門的な視点から見たリスクをどのように共有し、どのような切り口でお伝えすれば会社にとっての最善策に繋がるかを常に考え、試行錯誤してきました。
対話を重ねた末に、互いが納得できるところに着地できた時は、大きなやりがいを感じます。

子育てとの両立についてはいかがですか。

現在、子ども達が小学生なので、取締役会等重要会議がない日には、夕方一度帰宅するようにしています。
その後、子ども達が塾や習い事に出かけてから、夜までメール対応などの仕事を再開するスタイルです。
期末の3月下旬から6月の総会までは忙しいですが、それ以外の時期は比較的時間をコントロールしやすいと思っています。
在宅勤務を活用したり、周囲の方々も私の働き方を理解してチャットを使うなどサポートしてくださったりするので、非常に助かっています。
周囲の方々の理解があってこそ成り立っている働き方であり、大変感謝しています。

「自分の頑張り次第で道は拓ける」――不安を確信に変えて踏み出すには

三浦さんはグループ会社や他社の監査役も兼任されていますが、その意義をどう感じていますか。

会社は人と同じで、それぞれに「個性」があると思います。
いろいろな会社を担当することで、それぞれの強みや弱みがより鮮明に見えてくるんです。
他社での良い取り組みを自社に還元したり、逆に自社の状況を他社に共有したりと、相互に知見を活かすことで監査役としての「引き出し」がどんどん増えていくことに、大きな意義を感じています。

今後の展望について教えてください。

当面は監査役として経験を積み重ねていきたいと考えています。
監査役は学ぶことが多く非常に魅力的な仕事ですし、現在の子育ての時期に両立しやすいということもあります。
ただ一方で、30代でこの職に就いた私は、実務の第一線で自ら手を動かした期間が短いことに、一種の危機感も抱いています。
監査役は自ら手を動かせない立場ですので、将来的にもう一度執行側に戻って実務の経験値を積む局面も必要かなと考えています。

最後に、今後常勤監査役を目指す方へのメッセージをお願いします。

法的責任に対し、不安に思う方も多いかもしれませんが、自らの研鑽と真摯な取り組み次第で、しっかりと責任を果たしながら成果を出していける仕事です。
私自身も最初は不安でしたが、実際にやってみることで「自分の頑張り次第で道は拓ける」と実感しました。
私のように先輩方に経験談をたくさん聞きに行って、自分なりの確信に繋げていくというのも一つの方法でしょう。
子育てをしながらも、これほどの裁量を持って働けるポジションはなかなかないと思うので、不安を恐れず、ぜひこの世界に飛び込んでほしいですね。

取材・文: 大場 安希子
写真:  田中 有子

       

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