【ZOZO 五十嵐常勤監査等委員インタビュー】
「現場に足を運び、空気を感じる」
五感を研ぎ澄ませ、一社に向き合う私の仕事術

株式会社ZOZO
社外取締役・常勤監査等委員 五十嵐 弘子

監査法人、一般事業会社を経て、ZOZOの常勤監査等委員としてご活躍の五十嵐さん。
オンラインでのやり取りが定着した今も、「現場に行くことの大切さ」を強く感じているそうです。
画面越しでは見えない“現場の空気”を感じることが、監査等委員の仕事にどうつながるのかを紐解きます。

最終更新日 2025.6.27
※役職はインタビュー実施日現在のものです。

監査法人から事業会社、そして経営に寄り添う立場へ

キャリアのスタートは監査法人だそうですね。

はい。監査法人で、企業の法定監査の仕事に従事していました。
7年間ほどでしたが、クライアントの会社へ赴いて帳簿や契約書を読み込んだりチェックしたりと、現場スタッフとしての実務に多く携わりました。
その後、一般事業会社に転職し、会社の決算を締めて開示資料を作る財務・IRの仕事に就きました。
監査法人にいると、いくつもの会社の監査に携わりますが、自社一つに深く集中できるのは私の性に合っていたように思います。そちらでは転籍も含め20年ほど勤めました。

初めて常勤監査役に就かれたのは2019年ですね。どのようなきっかけだったのでしょうか。

前職は非常に充実していましたが、50歳を過ぎてこの先の働き方を考えた時に、「何か違う仕事を始めてみようかな」と思ったのがきっかけです。
そんな時にちょうど知り合いから声をかけていただき、ZOZOの常勤監査役(※当時)に就任しました。
前職での業務を経て、経営に近い立場で会社に関われるポジションに興味がありましたし、これまでの監査法人と事業会社での経験が活かせると思ったので、チャレンジすることにしました。

※2019年に常勤監査役として就任後、2023年に社外取締役・常勤監査等委員として就任。

実際に常勤監査役になられていかがでしたか。

仕事内容の面で、監査法人時代から監査役の仕事はずっと見ていましたので業務のイメージは持っていましたが、実際に入ってみると、会社の歴史やステージによって監査役に求められる仕事内容や期待されていることが違うと分かりました。
現在プライム市場に上場しているZOZOにおいて私に期待されているのは、日常的に会社の動きを把握し、情報をキャッチすることと理解していますので、社員の方々と頻繁にコミュニケーションを取るようにしています。

思いがけず巡ってきた、ダイナミックな経験

常勤監査役・常勤監査等委員として醍醐味や面白さを感じる瞬間について、お聞かせください。

はい。私が就任して1か月くらいのタイミングで、非常に印象的な出来事がありました。
当時のヤフー株式会社にTOB(株式公開買付け)という形でZOZOを売却し、前澤前社長が退任されるという一件です。
TOBを発表した日は朝から社内が騒然としました。
TOBの際には会社として買収提案に対する意見表明を提出しなければならないのですが、その意見書を取りまとめて発表するという業務に携わることになったんです。
通常ではなかなか経験できないような仕事が、突然回ってきました。
もちろん私ひとりでやるわけではなく、周囲の方々が協力してくださった上でのことですが、それでも非常に貴重でダイナミックな経験だったと思います。

まさに、会社の大きな節目に立ち会われたのですね。

そうですね。創業者の手を離れた会社が、大きなグループの子会社として新しいフェーズに入っていく、その過渡期に立ち会えたというのは、すごいことだったなと今でも思います。
私はその時は監査役でしたので、議決権があったわけではありません。
ですが、会社の良いところもそうでないところも含めて、経営に非常に近い場所で社外の人間が関われるというのは、監査役や社外役員ならではの醍醐味だと思います。

常勤監査役に就任する前と後で何かイメージにギャップはありましたか。

就任前に社内の人から「ZOZOにはいい人がたくさんいる」という話を聞いていましたが、実際に就任してみても、真面目で誠実という意味で「いい人だな」と思う方がたくさんいました。
でもそれだけでなく、自分の役割や提供すべき価値をきちんと理解し、互いに与え合いながら働いている方が多い印象があります。
実際に働く中で「いい人がたくさんいる」という言葉の意味を実感していますし、とてもいい企業文化が醸成されている会社だと思います。

「偉い人」ではなく、「話しかけやすい人」でいたい 監査役のコミュニケーション術

先ほど「社員の方々と頻繁にコミュニケーションを取るようにしている」とおっしゃっていましたが、具体的にはどのようにされているのでしょうか。

会社にいれば、ちょっと話しかけることも自然にできますが、在宅勤務の多い今はチャットツールで何かあったらすぐに質問しています。
初対面でも、「はじめまして」とダイレクトメッセージで気軽に話しかけます。

かなり積極的に話しかけに行くのですね。

そうですね。一般的に監査役に話しかけてくる人はあまりいないので、こちらから動かないとなかなか情報が入ってこないものと自覚しています。(笑)
だからこそ、気になることがあればすぐに動くようにしており、例えば決裁書を見ていて気になる点があれば、担当者に直接「これはどういう背景ですか?」と聞くようにしています。
もっとじっくり話したい時には、Google MeetやZoomでの打ち合わせをお願いしたり、時には「お昼ご一緒しませんか?」と声をかけたりすることもあります。
そういう行動力は、この仕事において大事かもしれません。

今日お目にかかった時に、髪の色がとても印象的で素敵だと思いました。こちらも親しみやすさを意識されてのことですか。

ありがとうございます。実はこのスタイルを始めたのは、監査役としてZOZOに関わることが決まってからなんです。
「ファッションが好きな方が多い会社なので、少し冒険してみてもいいのでは」とアドバイスをくださった方がいて、キャラクターを変えてみようかなと思ったんです。
必ずしもすべての場面で通用するかは分からないですが、今の環境ではそうすることで少しでも壁を下げられたらと考えています。

「一社に深く関わる」ことで見えてくるもの

今後どのようにお仕事をしていきたいかなど、考えていらっしゃることはありますか。

いろいろなことがリモートでできるようになったとはいえ、やはり会社に足を運んで、もっとリアルに皆さんと会うようにしていきたいですね。
私は、ZOZOが力を注いでいる企業風土(ZOZOらしさ)に共感し、応援しています。
ですから、それが維持されているかを観察することや、実際に働く方々のお顔、仕事や挑戦を楽しんでいる様子など、社内の雰囲気に触れることはとても重要だと感じていて、 そうした情報を得るためにもっと出社の頻度を増やしていきたいと考えています。

企業風土の維持は、企業経営にとって大事なことなのですね。

はい。私は、健全な企業風土が根付いている会社は、自ずとガバナンスが適切に機能すると考えています。
そうした会社では、仮に不祥事が起こったとしても、適切な対応ができるため大事に至ることなく結果として健全な成長につながると信じています。
そのため、健全な企業風土が醸成されている会社と監査役・監査等委員とは、対立関係に陥ることなく、 事業の成長や企業価値の向上という共通の目標に向かって協力する関係でいられると思っています。

五十嵐さんの根底にあるお考えがよく分かりました。
複数の会社の監査役・監査等委員を務める方もいらっしゃいますが、五十嵐さんはいかがでしょうか。

もともと一つの会社に集中する方が自分の性分に合っているというのもあり、今は他社の監査役をやろうとは思っていません。
もちろん、他社の経験があれば、社外監査役としてコメントできる幅も広がるのかもしれませんが、今は一社に深く関わることでこそ、見えてくることがあると思っています。
他社の情報や視点については、同僚の監査役の方々が複数社での経験をお持ちなので、そうした方々の意見を参考にすることも多いです。
加えて、監査役協会への参加や、親会社との合同監査会などの機会を通じて、他社の監査の状況や課題を知ることもできています。今のところ、必要な情報は十分に得られていると感じています。

今後、監査役・監査等委員を目指す女性に向けて、メッセージをお願いします。

監査役や社外役員になることを考え始めたら、いろいろな会社の役員の顔ぶれを見てみると良いと思います。
経営者もいれば、会計士、コンサルタント、金融出身、社内出身など、本当に多種多様です。
だからこそ、「こんな自分にできるのかな」ではなく、「どんな人でも何かしらの経験があればきっとできる仕事なのでは」という気持ちで、ぜひチャレンジしてみてほしいと思います。
資格を持っていたり、同僚や先輩に監査役経験者がいたりすると、イメージしやすくなるかもしれません。私自身もそうでした。
また、育児などでキャリアにブランクがある方も、きっと大丈夫です。
お声がかかった時点で、すでにその人の経験や資質が認められているということなので、自信を持って一歩踏み出してほしいですね。

ただ、どんな会社でも監査役をやってみればいいというものではなく、やはりその会社がどんな会社なのか、自分できちんと調べてみることが大切です。
有価証券報告書やウェブサイトを見るだけでなく、人に聞くことで得られる情報も多くあります。
私自身も、ZOZOに関わると決まった時は、いろいろな方に話を聞きに行きました。

実際に入ってみても、聞いていたとおり、本当にいい人・チャレンジ精神や自立心の高い人が多く、それが企業風土として根付いているので、私は安心して仕事ができています。
前もって知ろうとする姿勢は、実際に監査役・監査等委員として働く上でも、きっと大きな支えになりますよ。

取材・文: 大場 安希子
写真:  田中 有子

       

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