【コーチ・エィ 片岡常勤監査等委員インタビュー】
「ブルーオーシャンを泳げ」
企業内弁護士から監査等委員というネクストステージへ

株式会社 コーチ・エィ
取締役 常勤監査等委員 片岡 詳子

長く企業内弁護士として活躍され、2020年から常勤の監査等委員になられた片岡さん。
企業法務から監査等委員への親和性や、弁護士にはまだ新しい常勤の監査役・監査等委員という働き方を切り拓くことの楽しさについてお話しくださいました。

最終更新日 2025.5.7
※役職はインタビュー実施日現在のものです。

企業内弁護士としてのキャリア

片岡さんは企業内弁護士としてのご経験が長いそうですね。

はい。弁護士登録4年目の2001年10月に企業内弁護士になり、そこから20 年以上、老舗の電気・電子機器メーカー、カリスマ経営者が率いるアパレル、外資系テーマパーク、そしてコーチングファームと、業種・規模・文化の全く異なる4つの企業で広範な法務業務に携わりました。
コーチ・エィには2018年1月に入社し、当初は法務の仕事をしていましたが、2020年に常勤の監査等委員になり、今に至ります。

企業内弁護士の領域を極められたのですね。

弁護士としてはかなりユニークなキャリアを歩んできました。
ちなみに、「ブルーオーシャンを泳げ」が私のキャリアのテーマです。
私が2001年10月に松下電器産業(現パナソニック)に入ったころ、企業内弁護士は全国に66人しかいませんでした。
企業内弁護士は今でこそ珍しい存在ではなくなり、JILA(日本組織内弁護士協会)による最新の調査によると3391人いて、パナソニックでも30人くらい活躍していらっしゃいますが、当時は私一人だけでした。

片岡さんがブルーオーシャンを開拓するのはなぜですか。

既存の評価や競争の仕組みに縛られずに済みますし、自由に試行錯誤できることが楽しいからです。
実は常勤の監査役・監査等委員という仕事も、弁護士の職域としては新しく、私の知るところでは現時点では20人程度じゃないかと思います。
2023年7月に「弁護士常勤監査役員の会」という会を作ったのですが、当初4人しか見つからなかったことを考えると、急速に増えていると思います。

監査等委員の仕事は法務の延長線上に

コーチ・エィで初めて監査等委員になられたとのことですが、どのようなきっかけだったのでしょうか。

私が法務部の社員として入社した頃、コーチ・エィは上場準備中でした。
前職のUSJでは法務部長としてIPOの仕事をしていたので、その経験を買って採用していただいたのだと思います。
IPOの審査にあたっては、常勤の監査役又は監査等委員を設置することが求められます。
私は法務のマネージャーとして、IPOのプロジェクトの一環で、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行手続きを行ったのですが、社内で誰かが常勤監査等委員のポジションに就かなければならない状況で、私が就任する運びとなりました。
コーチ・エィは、紆余曲折ありましたが2022年12月に上場を果たしました。

企業の法務から監査等委員というのは親和性があるのでしょうか。

内部統制における3ラインモデルという考え方があります。
法務時代はこの第2線(コンプライアンス部門・リスク管理部門)の立ち位置から、コンプライアンスやリスクマネジメントについての支援や助言をしてきたわけですが、監査等委員としての監査業務も、立場は違えど見ているものや目指していることは同じですし、その延長線上にあると考えており、高い親和性を感じます。

監査等委員は、これまでの企業内弁護士としてのご経験をダイレクトに活かせる仕事なのですね。

そのように思います。監査等委員は、経営に関する様々なリスクを察知し、是正を促す役割を担っており、その中にはコンプライアンス違反のリスクも当然含まれますので、弁護士としての知見や法務業務での経験をそのまま活かすことができます。
また、複数社の法務部門にて株主総会や取締役会の運営業務に携わってきたことも、そういう場での監査等委員としての発言や振る舞いを考える上でとても役立っています。

片岡さんがお考えの、監査等委員としての発言や振る舞いとはどういうものでしょうか。

監査等委員は経営チームの一員です。
取締役会や経営会議など、会社の重要な会議体のメンバーとして、質問や意見を述べることができる立場にあることは大きなやりがいです。
一方で、これまで法務の立場で株主総会や取締役会を運営してきた経験から、役員の発言を受けて会社の実務担当側がどのように動くことになるのかも想像できます。
ですから、思いついたことを100パーセント言えばいいのではなく、その後の影響も考えて責任を持って発言し、時には控えてバランスを取ることも必要だと思います。

企業法務出身かどうかに関わらず、弁護士が監査役・監査等委員に就くことの意義についてはどのようにお考えですか。

私は経営チームの中での自分の役割を「ガーディアン」、つまり見守り保護する人と位置付けています。
弁護士はリスクマネジメントのプロなので、不正・不祥事を起こさないためにあらゆるリスクにアンテナを張って会社を守る行動をとる監査役・監査等委員という職務には、非常に適していると思います。
ただ、会社の成長あってこその経営なので、リスクがあるからダメというだけではなく、経営チームのためにできる限り広く「スペースを空ける」ことも目指しています。ここまでであれば自由に果敢に攻めてもよいですよ、リスクテイクしてよいですよ、と。
その見極めができることが、長く企業法務に携わってきた私の強みでもあります。

企業弁護士だからこそのスキルを活かす仕事術

監査等委員になって、想像通りだったこと・違ったことはありますか。

弁護士としての知見や法務業務での経験を活かすことができる点については想像通りだったと思います。
一方で、常勤の監査等委員や監査役には、どちらかというと会計士かその会社の経理部門出身の方が就任されるイメージで、会計の専門家ではない自分に務まるのかという不安はありました。
やってみて分かったこととして、一つは就任してから学べるということです。
日本監査役協会が実務的なマニュアルやガイドライン、ひな形を大量に用意してくれており、また、毎日のようにセミナーの案内もあります。
そして、この仕事の特徴の一つに、監査業務としていつ何をするかを自分で組み立てられるということがあります。つまり、就任後に、スキルの不足を補うための学習をする時間を作ることができ、そのためのコンテンツがたくさんあるといえると思います。

もう一つ、監査はチームで取り組む仕事であることも分かりました。
コーチ・エィの場合、社外の監査等委員の内お一方は会計士で、もうお一方は経営のバックグラウンドの方で、監査等委員会として、それぞれの得意分野を活かし、協力し合って監査機能を果たしています。
弁護士は、リスクに対する高い感度・嗅覚がありますし、プロセスが適正であるかを見極めるのが得意ですので、会計の専門的な知識がないから務まらないということではないと思うに至りました。

お仕事の中で工夫されていることなどはありますか。

個室に入らず、法務のマネージャーをしていたときと同じ席に座って、目と耳から、今ここで何が起こっているかの情報をキャッチしています。
法務の席にいると、契約やインシデントについてなど、法務に関する質問をされたりアドバイスを求められたりすることもよくありますが、監査等委員なのでできませんとはできる限り言わずに対応するようにしていて、それによってトラブルの芽を摘むことができていると思います。

正に、法務の延長線上に現在のお仕事があるのですね。

監査活動の一環として、法務時代から見てきた契約書など、意思決定のプロセスに関するドキュメントは今も一通りチェックしています。
監査等委員になってから始めたこととしてはスタッフのインタビューで、内部監査の責任者とともに年に50~60人程度とお話しさせていただきます。
やはり監査等委員のインタビューとなると身構えると思うので、「最近どう?」といった感じでカジュアルにお話しいただけるように工夫しています。

自由度の高さが最大の魅力。監査等委員の働き方

監査等委員になられて、働き方は変わりましたか。

執行側で法務の仕事をしていると、役割やミッション、タスクが上司や社長から絶えず降りてきたものですが、監査等委員の場合それはありません。
監査等委員に役割を期待する一般株主という存在は目の前にはいないわけです。
自分の役割の定義も、監査業務としていつ何をするかも自分で決めるしかないですし、この自由度の高さが最大の魅力だと思っています。

片岡さんは他社でも監査役・監査等委員をされていますね。

現在、ディー・アイ・システムというスタンダード上場会社の社外取締役監査等委員と、プライムロードという非上場のスタートアップの社外監査役、KPPグループホールディングスというプライム上場会社の社外取締役監査等委員を兼職しています。
4つの仕事をしていることによりとても忙しいかというとそうでもありません。
絶対に出席しなければならない株主総会や取締役会の日程が各社被りがちで、他の役員の方々もお忙しい方ばかりなので、スケジュール調整が大変というのはあるのですが、業務量のマネージはできています。
土日に仕事をすることはほとんどないですし、年に2~3回は趣味である海外旅行にも行けています。

今後、どのようにお仕事をしていきたいとお考えでしょうか。

常勤監査役・監査等委員という働き方は弁護士にとって新しく、冒頭に申し上げた私のキャリアテーマにも非常にフィットしています。今の働き方がとても気に入っているので、今後も監査等委員としての経験を積んでいきたいと思っています。
弁護士常勤監査役員の会の活動にも力を入れて、仲間も作っていきたいですね。

最後に、今後常勤監査役を目指す女性にメッセージをお願いします。

常勤監査役・監査等委員という仕事は自由度が高く、それゆえに「組み合わせが効く仕事」です。
私の場合は他社の社外役員との兼職ですが、例えば子育てなどのライフイベントとも両立しやすい仕事だと思います。
常勤の監査役・監査等委員を設置しようという会社は、上場準備段階にあるケースも多いと思います。
そのような場合は、IPOのプロセスに関与するという貴重な経験を積むことできますし、もし上場を果たすことができれば、その喜びは忘れ難いものとなるでしょう。
私にとっても、コーチ・エィの上場は職業人生の中で最も嬉しい出来事のひとつでした。
監査という領域のスキル・経験を身に付けることができることも、役員としての肩書も、その後のキャリアに有効であることは間違いないと思います。本当にお薦めしたい職務です。

取材・文: 大場 安希子
写真:  田中 有子

       

CONTACT お問い合わせ

女性監査役をお探しの企業様、また監査役への就任にご興味がある求職者様はフォームに必要事項をご記入の上、お問い合わせください。

お問い合わせ後3営業日以内に担当者より連絡いたします。

当社担当者との面談の機会を頂き、求職者様には監査役の仕事内容や紹介企業の情報等の説明を、求人企業様には求職者のご紹介までの流れをご説明させていただきます。

会社名
氏名
フリガナ
メールアドレス
当サイトを知ったきっかけ
相談したいこと