【ダイブ 稻川常勤監査役インタビュー】
キャリア形成も子育ても諦めない
「選択肢を持つ」という私のwell-being

株式会社ダイブ
常勤監査役 稻川 静

子育てをしながら弁護士業を続けることの大変さを痛感し、働き方を模索する中で監査役という職務に出会った稻川さん。
周囲と相談しながら徐々にご自身の監査役スタイルを確立してきたプロセスや、キャリア形成と子育てを両立させるための考え方をお話しくださいました。

最終更新日 2024.10.16
※役職はインタビュー実施日現在のものです。

ライフスタイルの変化と弁護士業の継続における問題

キャリアのスタートは、法律事務所だそうですね。

はい。私の所属していた法律事務所では主に企業法務を扱っていましたので、上場企業の株主総会の指導などに携わっていました。
株主総会の指導というのは、その企業の直近の活動を理解した上で、想定問答集の作成、リハーサルの立会い等公開会社の株主総会の運営に関するサポートをすることです。

その後、ご自身で法律事務所を設立されているのですね。

現代表の女性弁護士が法律事務所を設立することになり、その創設パートナーとして参画しました。
私は子どもを出産後、法律事務所に籍を置きつつ期限付きの公務員として仕事をしていた頃で、今後の弁護士のキャリアをどうしていこうかと悩んでいたタイミングでした。

代表とは以前から友人関係だったのですが、女性が子育てをしながら弁護士として稼働し続けることの大変さに話が及んだ際に、彼女の持つ構想を聞かせてもらったんです。
それは、子育てのみならず色々な事情を持つ人同士で助け合って、それぞれが生きやすく、やりたいことをやれる場所としての法律事務所を設立したいというものでした。
私も、子育てをしながら働くことがこんなにもままならないものかと痛感していた時期だったので、その思いに共感し、設立に参画させていただくことにしました。

子育てをしながら弁護士業を続けることの大変さは、具体的にどんなところに感じていましたか。

弁護士の仕事は、時間は比較的自由に使える方だと思うのですが、それでも労働集約型なので仕事量は多くなりがちです。
特に、弁護士は事務所に所属していたとしても基本的には個人事業主であることが多いのですが、その場合労働法上の労働者とは扱われません。
弁護士の世界は未だに男性が8割を占める男社会ということもあり、法律事務所の中に育休や産休という概念がなく、「休む」=弁護士としての稼働が止まることになってしまいます。
大手事務所においては、このような状況は変わってきているとも聞いたことがありますが……。

なるほど、個人事業主としてのご苦労もあるのですね。

はい。先輩弁護士から聞いた話では、出産して稼働できない時期でも事務所に毎月経費は収めて、何とか籍を置かせてもらうといった苦労をされている方もいるようです。
そういった事情から、私の同期の女性たちも弁護士として稼働し続ける人が少なく、企業内弁護士のような会社に雇用される形を選ばざるを得ないということもあります。
それを望んで選択するなら良いのですが、そうでない方もいるので、選択肢がある環境、つまり「別の道はあるが、今の道を積極的に選んでいる」という状態を作っていきたいですね。

キャリアの模索中に出会った監査役という仕事

どのようなきっかけで監査役を始められたのですか。

代表の友人だった公認会計士の方が一時期ダイブで経理のサポートに入っており、その方からの紹介がきっかけです。
ダイブが上場を目指そうとした時期に前任の常勤監査役の方が辞められて、後任がいないということで、その公認会計士の方から弊所の代表弁護士に相談が持ち掛けられました。
その頃私は、前述の任期付き公務員の仕事をしており、ちょうど次のキャリアを模索し始めたタイミングだったので、紹介いただきお引き受けすることになったのです。
お互いにとってベストなタイミングで、良いご縁をいただきました。

ダイブへの就任を決めた理由はどんなところにあったのですか。

社長との面談で、「なぜ上場したいのか」を質問した際のお話に感銘を受けたことが、大きかったように思います。(※)
もちろん、上場することで資金力を高め、影響力を広げたいといった経営者然とした動機もお持ちでしたが、最後にお話しくださったコロナ禍でのご苦労が心に残りました。
ダイブは観光施設に特化した人材サービス(リゾートバイトの派遣業)を基幹事業としているので、コロナ禍でかなりの打撃を受けたそうです。
事業撤退やオフィスの縮小など、大変な局面がいくつもあった中でも残ってくれた今のメンバーに、上場という結果で応えたいのが一番の理由だと話してくださり、私もそんな温かい思いのある経営陣と一緒に会社の成長を支えたいと思ったのが、就任の決め手となりました。

また、他の役員の方々ともお話ししたのですが、皆さんが会社のミッションである『一生モノの「あの日」を創り出す。』を心から語ることができて、腹落ちしているところも素晴らしいと思いました。
そのミッションに私も共感しましたし、皆さんの事業に対するホンモノの気持ちに惹かれたので、この会社への参画を決めました。

※株式会社ダイブは、2022年1月の稻川常勤監査役就任から2年後の2024年3月に東京証券取引所グロース市場へ上場

試行錯誤で構築した私の監査役スタイル

素敵な会社ですね。就任されてからは周囲の方々とどのようにコミュニケーションを取っていますか。

代表取締役とは月に一回面談を設けており、業務監査や往査で気になった点や監査結果を共有しています。
また、面談をする中で、他社の不正事例なども共有してほしいとリクエストを受けたので、第三者委員会が設立されて調査報告書が作られるような事件・事例を共有し、その争点や問題視された点などについてお話をしています。

非常に興味深い取組みをされているのですね。

最初からこんなふうに取り組んでいたわけではありません。
どういう形で常勤監査役を務めていくかについては、私も周囲の役員もみんな手探りでした。
最初はどの会議に出席するかについても、社外の人だからと遠慮されたりしたのですが、私が必要だと思ったものについては「参加させてください」と申し出たりもしました。

では、色々と試行錯誤を重ねて今の常勤監査役の形に至ったのですね。

そうですね。周囲の会計士監査役の方や他社で監査役に就かれているアドバイザーの方にも相談して、「こんなミーティングがあるといいよ」といった助言をいただきながら、社内に様々な場を設けています。
前任の常勤監査役からの引継ぎがなかったこともあり、初めから決まった形というのはなく、色々と試しながら作っている感じがあります。

弁護士のご経験は監査役の仕事のどんなところに活きていますか。

業務監査においては事情聴取が主な仕事になるのですが、事実を聞き取ることに関しては弁護士が得意とするところなので、活かせているかもしれません。
職業柄、最終的に訴訟になった時にどうするかということを常に考えており、そういった観点で助言したり、あらゆる争点を考慮しながら書面を作ったりしています。

常勤監査役の醍醐味はどんなところに感じますか。

ダイブだからというところはありますが、私が参画したのはちょうど上場に向けて体制が整い成長していくという時期でしたから、その過程を非常にいい距離感で見せていただいています。
社外役員ほど遠くない距離で直に社員の皆さんと交流しながら、中の人と同じ目線で会社の成長を感じることができるのは、常勤監査役の醍醐味だと思います。

また、経営会議に出席できる点も有難いですね。
もともと、弁護士という立場は外野になりがちなのですが、経営会議の場では会社の中を向いて、経営者の意思決定の過程を見ることができるので非常に勉強になります。
どのようなことを考慮し、数字をどのような角度から見ているのか、同じ資料でもどのような視点から読んでいるのかといったことをすぐそばで見て学べることも、醍醐味の一つです。

「外注を躊躇しない」。みんなの幸せを叶えるための決意

子育てとの両立という点ではいかがでしょうか。

現在子どもは5歳と8歳で、保育園の送り迎えを夫と分担しつつ、閉園間際まで預けることもあります。
本当はもっと子どもと一緒にいたいですし、少し前までは、母親の自分と仕事をしている自分で分身できたらいいのに、なんて思っていました。
今も罪悪感を持つことはありますが、子どもと離れている時間があり、自分に母親以外の社会的な役割があることで、子供とのかかわりがむしろ良くなっているようにも感じています。

子育てとの両立のために、具体的に工夫されていることなどありますか。

外注を躊躇しないと決めています。
シッターさんや家事代行の人を家に入れることに抵抗を感じた時期もありましたが、「みんなのハッピーのために乗り越えたほうがいい!」と、考えを変えました。
外注するのは、子どもと私の時間を確保するためでもあるし、「子どもがいるから私のやりたい仕事ができない」と思わないためでもあります。
実際に外注するかしないかはその時々によりますが、色々な手段やほかの選択肢があると思えるだけで、心持ちが全然違います。

今後、やってみたいことはありますか。

会社が上場して新しいフェーズになったばかりなので、この会社の常勤監査役として学ぶこと、やるべきことはまだたくさんあるものの、いずれは他社の監査役や役員などもやってみたいです。
ダイブでの経験を活かせると思いますし、他社で得た知見をダイブに還元することもできると思うからです。

最後に、今後監査役を目指す女性にメッセージをお願いします。

働くからには責任のある仕事に就いて、それを果たしたいと考えている方は多くいらっしゃると思います。
ですが私は出産後、選択肢が制限されるという局面に接し、責任を取る仕事に就くのが怖いと思ってしまった時期がありました。
子どもという、絶対に最優先にしなければならない対象ができたことで、ほかの対象に責任を持つことを躊躇してしまったのだと思います。

もし、母親になったことで同じような思いを持っている方がいるなら、その躊躇から一歩踏み出すための職務として、監査役を考えてみてもいいかもしれません。
監査役は、組織の中で重責を担いながらもそれを果たす領域が一定の範囲にあるという点で、子どもへの責任と仕事への責任を両立できる職務だと思うからです。
ですから、責任ある立場で働くことを怖がらなくてもいいんだよ、色々な選択肢があるよ、とお伝えしたいですね。

取材・文: 大場 安希子
写真:  山根 友美

       

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