【アスエネ 富山常勤監査役インタビュー】
「社会のために、私は何をするか」
スタートアップの使命感とともに踏み出した監査役の道

アスエネ株式会社
常勤監査役 富山 暁子

二人のお子さんを出産後、監査役の世界に入られた弁護士の富山さん。
尊敬する恩師からの「社会のために何をするか」という問いに対し、強い使命感を持つスタートアップ企業の一員としてチャレンジをすることで答えを出そうとする、その思いを伺いました。

最終更新日 2024.9.27
※役職はインタビュー実施日現在のものです。

弁護士のキャリアと働き方を見直した出産後

キャリアのスタートは、法律事務所だそうですね。

はい。弁護士として大手法律事務所で企業法務に携わりました。
その中でもファイナンスの分野や、企業が日常的に直面する様々な法律問題を法務面からサポートするような仕事を多く担当してきました。
その後、金融庁へ出向してG20/OECDコーポレート・ガバナンス原則の改定に携わったのですが、その時に企業統治や内部統制について学んだことも、現在の監査役の仕事につながっています。

監査役という選択肢はいつ頃からお考えだったのですか。

金融庁に出向の後、子どもを二人出産して働き方について迷っていた時に、同じ法律事務所の同期の弁護士が事務所を立ち上げたので、そちらに所属を移しました。
その事務所では、それまでの大手事務所とは違って、スタートアップ企業やIPO後の会社の法務を多く扱っていました。
また、別の同期の弁護士がスタートアップ企業の監査役に就任したことをきっかけに、自分の選択肢として考えるようになりました。

富山さんご自身も、監査役を始めるならスタートアップ企業でとお考えでしたか。

はい。スタートアップ企業の法務を扱う中で、若い会社というのは社員の裁量が多く、皆で前を見て楽しそうに仕事をしている雰囲気がとてもいいなと思っていました。
そして自分も、スタートアップ企業の一員になって、社員の方々と同じ方向を見て切磋琢磨したいと考えるようになったんです。
IPOについても、これまで企業の外側から支援することはありましたが、内側の視点を知りたいと考え、監査役を紹介するエージェントに登録しました。

スタートアップで踏み出した初めての監査役

エージェントの紹介でアスエネの常勤監査役に就任されたのですね。

実は、エージェントに登録した時点ではまだ下の子どもが5歳と小さかったので、監査役を始めるのはもう少し先になるだろうと考えていたんです。
ただエージェントの方から「ぜひ紹介したい」と、思っていたよりも早くお声がけをいただいたのがアスエネでした。
どんな会社だろうと調べてみると、地球温暖化対策のための企業のCO2排出量見える化・削減・報告クラウドサービスなど、気候変動テクノロジー事業に取り組むスタートアップ企業でした。
会社のミッションに「次世代によりよい世界を。」ビジョンに「次世代を変える会社」を掲げているのですが、実際にお会いしてみても、代表の西和田さんを始めとした社員の皆さんが、熱い気持ちで社会の変革に本気で取り組んでいると分かり、魅力を感じました。

富山さんご自身もそのビジョンに共感されたのですね。

そうですね。少し時間を遡りますが、弁護士として仕事に慣れてきた頃に、大学の恩師から「社会のために、君は何をしているんだね?」と聞かれて答えられなかったことがありました。
それ以来、自分が社会のために何をするかが、キャリアを選ぶ重要な位置を占めていたこともあり、アスエネの抱く使命感に駆り立てられ、共感したのだと思います。
経営陣のお話を聞き、この会社に参画することによって私も社会的な貢献を果たせるのではないかと考え、就任を決めました。

スピード感に触れる刺激的な日々

実際に監査役に就任されていかがでしたか。

スタートアップ企業ならではのスピード感に影響を受けています。
日々、新しい事案がもの凄い勢いで出てきますので、私自身もビジネスや業務の知識をアップデートして対応する瞬発力がついてきたように感じています。
また、取締役会や経営会議を見ていても、結論が決まっていて報告するだけといったことはなく、その場で必要な議論が尽くされており、多角的に検討されているのが分かります。
ビジネスの最先端の場に身を置いているおかげで、弁護士業だけでは知り得なかったであろうことに触れられる点に、常勤監査役の醍醐味を感じます。

弁護士が監査役になることの意義について、どのようにお考えですか。

ひと口に監査と言っても、会計監査や業務監査という領域がありますが、特に業務監査は弁護士の勘どころを大いに活かせる領域だと考えています。
具体的には、法律の知識やヒアリングの能力を活かして、事業上のリスクに気づいたり、解決策を検討したりできるというところでしょうか。

反対に、監査役になるにあたり心配だったことなどはありますか。

やはり、会計監査の領域については不安がありました。
会計についての基本的な知識はあるものの、専門家には及ばないためです。
ですが、監査役会の中には会計に詳しい方もいるので、そこは各自の専門性でバランスが取れていれば良いということも分かってきました。

先ほど申し上げた解決策の検討においても、自分だけでなく業務部隊や、時に外部の法律事務所とも相談しながら進めており、必要な時に適切な体制で協力していくことが大事だと考えています。
また、監査役独自の業務についても、日本監査役協会から発信される最新の情報や研修会を通して勉強することができますし、周囲の監査役の方に直接お話を伺ったりもできるので、当初のような不安は減ってきました。

スタートアップならではの文化と子育てへの理解

子育てとの両立という点ではいかがでしょうか。

監査役の仕事は長いスパンの中でスケジュールを決められるので、子どもの学校行事などとの調整がしやすいと思います。
まだ下の子どもが低学年で帰りが早いので、私も早い時間に在宅で仕事をして、子どもが帰ってきたら宿題を見て、その後仕事を再開するなどフレキシブルに時間を使っています。

また、アスエネは経営陣にもお子さんのいる方が多く、子育てや多様な働き方への理解があるな、と感じています。
これは、事業規模や社員数が急速に拡大する中で、色々なバックグラウンドを持つ人が集まって、それぞれを受け入れ、多様性のある組織を作ってきた故の、スタートアップ企業ならではの文化なのだと思います。

最初の監査役に就任する先として、スタートアップ企業はお薦めしたいですか。

そうですね。スタートアップ企業はまだ会社の体制が完成していない段階にあるので、そこを一緒に作っていけるところに面白さがあります。
内部統制についても、会社の規模に応じて検討しなければならない事項が異なりますし、拡大したら留意すべき点もまた変わってきます。
企業の成長とともに試行錯誤することを楽しめる方には、お薦めしたいです。

今後、どのようにお仕事をしていきたいとお考えでしょうか。

まずは4年の任期をきちんと果たしたいと考えています。
当社は成長スピードも速く、色々な事業やM&Aが次から次へと出てきますので、何かあってから対処するのではなく、リスクを早期に発見して問題を予防できることが重要だと思っています。
それがあってこそ、当社の魅力ある事業やサービスが社会に貢献できるので、しっかりと支えていきたいと考えています。

最後に、今後監査役を目指す女性へのメッセージをお願いします。

もし、子育てを理由にご自身のキャリアを諦めている方がいるなら、ぜひチャレンジしてみてほしいです。
私も子どもを持って、もちろん育児を大事にしたいと思っていますが、子どもがいると自分ではコントロールできないことがたくさん起きます。
そんな中でも監査役の仕事は、長いスパンの中で日々のタスクをコントロールできるので、子育てとの両立がしやすいと思います。
そして、これまでのスキルを活かせるだけでなく、ビジネスの視点からも多くのことを学び、新たな成長を感じられる仕事なので、チャレンジのし甲斐があると思います。

取材・文: 大場 安希子
写真:  田中 有子

       

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