【リクルートホールディングス 長嶋常勤監査役インタビュー】
「未来を見据え、市場価値としてのフェアネスを考えるプロフェッショナル」
監査役の面白さはここにある

株式会社リクルートホールディングス
常勤監査役
長嶋由紀子

 

新卒でリクルートに入社後、営業から社内人事、ブライダル事業責任者、人材派遣会社社長…と目まぐるしいアサインメントを経て、現在は常勤監査役としてご活躍されている長嶋由紀子さん。
第一線で鍛えられたビジネス感覚と未来を見据える視点で、事業のフェアネスをバランスよく保つ。
そんな長嶋さんの監査スタイルを伺いました。

最終更新日 2022.03.11
※役職はインタビュー実施日現在のものです。

どんな経験も未来の自分の糧に。リクルートでの多岐に渡るアサインメントと経験

リクルート入社から現在までの経歴を、簡単にご紹介いただけますでしょうか。

新卒でリクルートに入社し、新卒の学生に企業を紹介する事業(現在のリクナビ)の営業に就きました。当時は、毎日ドアノックして新規クライアントを探すような体力勝負のハードワークで、入社後数か月で辞表を書いたほどでした。
一方で、「未来のための人材獲得」という企業戦略のサポートには意義を感じており、過酷ながらも日々ワクワクしながら業務に取り組んでいたようにも思います。
芽が出ない営業マンから売れる営業マンとして認められるようになり、その後は組織長に抜擢されました。
リクルートは良くも悪くもアサインメントが早い会社で、成果が出るとすぐに次の役目を与えてくれました。

そうして10年たった頃に、人事部にアサインされました。
当時、債務超過となっていたリクルートはダイエー傘下に入り、グループ全体で借金の返済を進めていくことに必死でした。それに伴い人事制度も職能給から職務給に大きく変革するという、振り切っていかなければいけない時期だったんです。
当初は、「事業の最前線にいた私がなぜ人事に?」と悩みましたが、社外に向けて実績を出してきた人間が社内に向けて意見することによる説得力を求められていると理解し、この仕事に力を尽くしました。

人事の仕事に就いたことは、債務超過となっているこの会社になぜ「未来」がなければならないのかを考えるいい機会になったと思います。創業者である江副氏は人事オタクみたいな経営者だったと思うのですが、江副氏が残したたくさんの人事関係の資料を倉庫部屋にこもって読み漁ったりもして、リクルートは未来のために残らないといけない会社だと感じました。
そこから未来設計のための人材育成の仕組みを作っていこうと考え、次世代リーダー育成のような分野にも力を入れていったのがこの頃です。

その後、ブライダル事業ゼクシィの責任者となりました。クライアントは結婚式場はじめ多くのブライダル産業の方々ですが 、やはりこの分野はカスタマーオリエンテッドです。その意味で、これまでとは180度違う視点を得られ、ここにいた5年間で事業経営者としての経験を積むことができました。

その後、2008年に人材派遣会社リクルートスタッフィングの社長となり、2016年に常勤監査役に就任し、現在に至ります。

長嶋さんのお話には「未来」というキーワードが多く出てきますね。

意識して使っているわけではありませんが、キャリア変遷に伴って見るべき未来のスパンが長くなってくると思っています。課長は今期、部長は来期まで、本部長は3年先まで、社長は10年タームで…といった具合に。
あるステージ以上になってくると長い時間軸で見ていかないと意味がないですし、報酬というのはその未来に対して持つ責任に伴い発生するものだと思っています。

様々な事業や立場でのお仕事が、未来を見据える思考を育てたのでしょうか。

仕事での経験がすべてかというと、必ずしもそうではないと思います。
仕事に限らず、女性であれば母親業にシフトしている時間があっても、その時の経験から得たものや全く違う視点が得られたりしますよね。
どんなことをやっていても、いかに自分で気づくことができるか、それらを糧にできるかが重要ではないでしょうか。

40代で執行役員、グループ会社の代表取締役社長に就任されていますが、若くして役員・社長になられるというのは、どういうお気持ちでしたか?

若くしてという感覚はありませんでした。リクルートは他の企業よりも、次のアサインメントへのスピードが速く、30代で取締役になっている社員もいます。
「私だったらこうする、私にやらせて欲しい」と思っていたところにアサインメントが来たという感じでした。

ですが、全てが自分にできるなんてちっとも思っていません。自分にできないことは素直に捉え、チーミングで優秀な人に入ってもらって補うことが重要で、そこには腐心しました。

「自分で全てやらなければ」と思うから物怖じしたり、ためらったりしてしまうのですね。

そうですね。むしろ自分ができないことをきちんと認知し、手立てすることが大事だと思います。そこを勘違いすると、組織としてうまく成立しません。

仕事とプライベートとの両立という点ではどのようにお考えですか。

日々を楽しむために生きているので、プライベートの時間も大事です。
お子さんを持つ後輩からもアドバイスを求められることがあるのですが、すべてを1人で行うことはとても大変で難しいので、まず優先事項を明確にした方が良いと思っています。
自分にとって優先順位が低いものは、未来への投資だと思ってほかの人の手を借りるのも手段のひとつです。その分は「仕事で頑張ろう」とモチベーションに変えられるかもしれません。
そして、子供とのコミュニケーションなどの「自分にしかできないこと」に時間を充てられるとよりいいのではないでしょうか。

フォワード並みの筋力を持つ"審判"としての監査役

2016年にホールディングスの常勤監査役に就任されていますが、それまでとは事業へのかかわり方が変わってくると思います。そういった点での心持ちや会社の見方の変化はありましたか?

常勤監査役になって二日目。内部監査のミーティングをした時のことです。
その時に内部監査室長に、「監査役って、サッカーで言えばフォワードでもなくディフェンスでもない、ゴールキーパーのようなポジションなので、フィールドに出られないストレスがある」というようなことを話したんですよ。
そうしたら内部監査室長に大笑いされ、「長嶋さんね、監査役はゴールキーパーでもないですよ。強いて言えば審判です。プレイヤーではない立場でフェアプレーかどうかを見て、時にイエローカードを出すんですよ。」と言われたんです。
なるほど、と思いました。
監査役着任に足る知識は頭に入っていたのですが、そのスタンスを分かっていなかったなと。
それまでは自分もフィールドに出る気満々だったんですよね。

審判というスタンスに納得感を得られたのですね。

はい。ですが、現役であることには変わりありません。
サッカーの試合を見ていると審判って凄く走っていますよね。プレミアリーグの審判の太ももなんて選手並みの筋力です。
それと同じで、執行側がフォワードとして前線で走っているとしたら、その速力に負けないほどにビジネスの知識もアップデートし続けないと、監査役は追いつけないと思うんです。

ですから、当初は監査役になってビジネスの筋力が落ちていくような気がしていましたが、むしろ筋トレを続けてアップデートしていかなければならないと分かりました。
これまでに経験のないビジネスについても知らなければならず、一からキャッチアップしなければならないこともあるくらいです。
現役じゃない寂しさ、のようなものは全くありません。

その後、監査役としてのご自身の成長について、どのように捉えていらっしゃいますか。

私が監査役に就任した2016年は、2014年のIPO後のステージにあり、現在もそうですがコーポレートガバナンスを進化させていこうという段階に来ていました。
だからといってガバナンスのために押さえ過ぎて執行が何もできないようではいけなくて、最適なバランスを取ることが必要です。
グローバル企業や他社のお手本も勉強しながら、自社の未来とマーケットを見据え、毎年自社にとってのあるべき姿をアップデートしており、それが自分にとっての成長であるとも考えています。

長嶋さんは他社の社外取締役や社外監査役も兼任されていますが、他社を見ることの面白さややりがいはありますか?

他社から学ぶこともあれば、逆にリクルートの強みをシェアできることもあって面白いです。全く異なるフィールドでビジネスをされている他社の様子を見てそれを自社に還元するなど、相乗効果があると感じています。

最近は、監査役として培った「自分のものさし」が武器となって、他社の監査にも同じものさしで問いを立てられるようになってきました。軸となる考え方が自分の中にできて、それをあらゆる問題に対して共通して使うことができるということは、キャリア上の財産にもなります。

これから常勤監査役を目指す女性へアドバイスをお願いします。

もし監査役を引き受けるにあたり、知的好奇心や前線に立つ面白さがステップダウンすることを心配しているなら、全然そんなことはないとアドバイスしたいと思います。
弁護士や会計士、監査の専門性をベースに持たれている方が監査役になるのであれば、そこに経営の視点が加わってキャリアアップになるでしょう。
私のように執行から監査役になる人にとっても、ビジネスの前線に立っていた手触り感や ビジネス感覚に自負を持ちつつ、フェアネスを担保するプロフェッショナリティを後付けで身につける面白さがあります。
この面白さについては私の経験からも非常に感じているので、監査役の世界にCome on!と言いたいですね。

       

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