【フュービック 横山監査役トピックス】
監査役に求められるコミュニケーション ~監査法人時代との違い~

株式会社フュービック
常勤監査役/公認会計士
横山 敬子

PJOエグゼクティブサーチのトピックスは、これから監査役にチャレンジする方にとってより役立つコラムにするため、現役で活躍されている女性監査役に執筆していただきます。

今回の執筆者はフュービック常勤監査役の横山敬子さんです。

監査役に就く方の中でも監査法人から常勤監査役に転身される方は多いです。横山さんもその一人です。
監査法人と常勤監査役では役割が異なるため、会社との距離感が全く違います。その違いに戸惑う方も多い中、横山さんは監査役に求められるスキルを磨きながら現在も活躍されています。

今回はこれから同じようなキャリアチェンジを考えている方に向けて、監査法人と常勤監査役でのコミュニケーションの取り方の違いについて執筆していただきました。

最終更新日 2020.10.26
※役職はインタビュー実施日現在のものです。
※横山敬子さんインタビュー記事「こちら

監査におけるコミュニケーションの重要性について

監査法人所属から監査役と立場は変わっても「監査」がメインであることに変わりはありません。会社業務には多くの「人」が関与している以上、監査業務を進めていくためには関連する「人」とのコミュニケーションを図ることが必要です。そして監査は関連する「人」との信頼関係の上に成り立っており、信頼関係構築のために良好なコミュニケーションを図ることは欠かせません。今回のコラムでは監査役に求められるコミュニケーションを監査法人時代と比較しつつ私の経験に基づく考えをお伝えしたいと思います。

就任にあたって気をつけるべきこと

「役割」の違い

同じ「監査」であるのにも関わらず監査法人時代と監査役ではコミュニケーションが違ってくるのはなぜでしょう。両者の本来役割とステークホルダーから期待される役割が異なるからではないでしょうか。

監査法人は会社外の第三者として会計監査とその関連業務を行います。会社が監査法人に求めるのは会計専門家としてのお墨付きに加え、会計専門家としてのアドバイスや情報、グローバルネットワークでしょう。監査法人の情報を基に会社は行動するので正確であることが重要です。監査法人が専門領域で間違うことは会社からの信頼性、社会からの信頼性を失うことになります。従って、監査法人時代のコミュニケーションは間違えないよう「慎重に」とります。

一方で監査役は会社の一員でありつつ独立性を保ちながら取締役の職務執行の状況を監査します。職務執行の状況は、事業の種類や会社の規模、業績などによっても様々です。監査役監査には監査法人時代のような詳細なマニュアルがあるわけではなく、要領など参考にしながら監査役自身が判断しながら進めていきます。それに加え、会社が監査役に求める役割は経営陣の志向や監査役の過去のキャリア、会社の状況によっても大きく変わっていきます。一般的には会計や法律の専門分野の知識、経営者としての知見、安心感、経営陣にない気付きの提供、場合によっては厳しい指導というのもあるかもしれません。そのため必要となるコミュニケーションはとにかく広く、身近でバラエティに富むものになります。

監査法人も監査役も会社のために本来の職務を全うしつつ、会社をより良くするために、経営陣のニーズにも応えることが求められます。では以下、具体的にその違いを考察していきます。

相手の話をよく聴く(傾聴)の重要性

監査(audit)の語源はaudio(聴く)であることからも、相手の言葉に耳を傾けることは監査の基本です。

監査法人では、会計数値が適正かを判断するための1st stepとして会社業務等の理解、情報間の矛盾などを発見するためにヒアリングするでしょう。どの情報をいつ、誰から得るのかということが重要なポイントで、意見を聴く際には必要な情報をいかに引き出すかということに注力しているのではないでしょうか。

監査役には経営全般にわたる課題の把握が求められます。そのためには経営陣のみならず広く従業員からも意見を聴く場合もあります。必要な情報を得るためにピンポイントで話を聴くこともありますが、意見を聴きながら現在進行している課題、将来課題になりそうな事項を把握する場合の方が多い印象です。

また監査役というだけで怖がってしまう従業員も多いことからヒアリング対象者の緊張感を解く必要があります。課題が会社経営のどの領域に該当するのか、落としどころもイメージしながらとにかく丁寧さを心がけて意見を聴くことが大事ですね。

会社には上司にはなかなか言えず問題を抱えて辛い思いをしている従業員も少なくありません。そこで監査役が従業員に寄り添って話を聴く役割もあります。監査役が解決してあげることで従業員が会社に対する安心感を持ってもらうことにもつながります。

相手の立場に立って理解することの重要性

監査法人時代は、会社の状況は理解しつつも、期限内に監査手続を終えなければないことから会社に自分達の立場を理解し、行動してもらうことのほうが多かったように思います。また会計数値にどう反映されるのかという視点で相手を理解するため、見えているのはあくまで一面ではないでしょうか。

監査役監査は経営陣を対象とすることから監査役が経営陣から信頼されていないと成り立ちませんが、監査役自身が経営陣を信頼しなければ監査役も信頼されないでしょう。そのためには会社の事業だけでなく、経営陣を深く理解し、尊敬することが必要ではないでしょうか。監査役と経営陣、同じ会社の役員で重い責任を負い、会社を成長させていきたい想いは同じで役割が違うだけです。

自分の考えが相手に伝わり納得してもらう

誰に伝えるのか

監査法人時代は主に経理責任者及び経理担当者に意見を伝えます。会計用語を理解してくれているので伝えることに苦労することはないでしょう。重要な事項については経営者、監査役に対し気付いた事項を伝えます。会計専門家としての意見のため、基本的に会社側は受け入れ態勢を取ります。私自身、監査法人時代は他社の事例を参考にして考えている「あるべき像」を押し付けた面もあり、会社が理解し、納得していたかといえば自信がありません。監査役になって監査法人時代の伝え方の拙さに気付くことは多いです。

監査役になって誰に伝えるのかということを意識するようになりました。基本的には経営陣に「事実」を伝えるようにしています。その事実に対し対応策を考えるのは経営者の役割です。もちろん一緒に考え、意見を求められたら監査役の立場として意見を述べるようにしています。また経営陣のみならず、従業員に対し伝えることももちろんあります。そのときは個々の従業員ではなく、会社のためという高い視点から伝えるようにしています。

伝えないというコミュニケーション

監査法人時代は指摘事項があった場合、現場には速やかに、経営陣には事象が発生した年度監査終了時までには伝えます。つまりスピード感を持つことが大事です。監査役の場合、「今」伝えない方がよい課題もあります。会社のステージ、リソースなどを考慮すると他を優先しよう、とか、もうちょっと会社のステージが進んでからの方が良いなと思うからです。行動しないと意味がないことは会社内にいるからこそ分かることです。課題感を持ちながら見守り、伝えるべき時に伝えよう、だから敢えて今は伝えないということもあります。

終わりに

監査役になり4年が経過しましたが、日々コミュニケーションの難しさ、楽しさを感じています。監査役になると経営陣の熱量、会社の成長や従業員に対する思いに触れることができるのは監査法人時代では得られない経験です。

監査役のコミュニーションはこうあるべきだという絶対的な正解があるわけではありませんし、今日と明日で必要されるコミュニケーションは変わります。本当に自由で監査役の裁量に任されていることが監査法人時代と大きく異なります。

重要なのはトライアンドエラーを繰り返し、独善的にならないよう、経営陣を始めとする会社のメンバーと協力しながら会社をよくしていきたいと思い続ける姿勢ではないでしょうか。

       

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